this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
お狐奇譚 片夏村縁起
1
2
3
4
つぎへ >>
【片夏村の夕暮れ】
天も地も網羅せんと広がる白き野こそ、父の九尾だ。幼き
片夏 阿呂江
が包まればすっぽりと隠れ、赤毛の揺れる先端に頬をなぞられていると、それだけで世界の全てを見渡した気分だった。
そも白面九尾の狐といえば、人の世にさえあまねく伝わる妖怪の中の妖怪ではないか。寝子島へ入りびたるようになり、阿呂江は父の偉大をあらためて痛感したものだ。妖怪伝奇にマンガやアニメ、ありとあらゆる物語に描かれる父の姿に感動し、いささか歪な描かれ方には憤慨した。
尾に包まる阿呂江へ、父は幾度も言って聞かせたものだ。
「阿呂江。娘よ。お前は父や母のようにならなくてもよい。お前の思う道を進めばよいのじゃ」
「けれどちちうえ、あろえはちちうえみたいなすごいあやかしになりたいのじゃ! しっぽは九つ……いやっ、じゅっぽんじゃ! とおの尾をもつおおきなあやかしぎつねになりたいのじゃ!」
「はっはっは、儂を越えるか。それもよい。儂の子じゃ、いつかはお前も比類なき大妖となろうさ。しかし、今は……今少し、儂のもとにいておくれ。片夏村は好きじゃろう?」
「うむ! だいすきじゃ。ひらなつおんせんのぬくい湯も、だがし屋にうっておる『あぶらげさん太郎』も、花まつりに咲くいっぱいのユアミバナも。あ! きつねのおくりび? じゃったかな、あれもとってもきれいなのじゃ! あろえはひらなつ村がだいすきじゃ!」
「……そうか」
父の前足が頭に添えられると、肉球のやわらかな感触がぷにぷにと楽しく、阿呂江は何度もそれをせがんだ。ひとしきり甘えると、離れの縁側でともに昼寝を堪能した。日だまりの香りをたっぷりとふくんだ父のしっぽ枕は絶妙な寝心地で、いつまでだって眠っていられたものだ。
「ひらなつ村もだいすきじゃ。でもあろえがいちばんだいすきなのは……」
「うむ? なんじゃ?」
「ちちうえとははうえじゃ!」
ちー、と鳴いた。
「……クダ?」
肩に乗った管狐だ。
ぺろりと頬をなぞられ、阿呂江は頬を伝う涙に気づいた。
「父上……」
かたことと静かな音を立て、魔行列車は霊界の赤い空をゆく。車輪は線路を噛むが抵抗が少ないので、走行音はあまりしない。おかげですっかり寝入ってしまったらしい。
心ばかり逸って、自分が思うより気疲れしているのかもしれない。のんびりと眠るつもりなどなかったが、在りし日を夢に見たのはそのためか。
管狐を肩から下ろし、手のひらで包んでやる。幼き思い出から、阿呂江は信頼する者にそうされることがいかに心の安寧をもたらしてくれるか知っている。つなぎに寄越された小さな狐も、ただの一匹で寝子島の阿呂江を訪ねてくるにあたり、悲哀や不安を抱えていたことだろう。
なにしろ里の長たる父、片夏 玉水が身罷ったのだ。
その報せを届ける大役に疲れ切ったか、管狐はちーと鳴き、すぐにも寝息を立て始めた。
窓の外を眺めれば、霊界の空。赤光の向こうにやがて、赤い鳥居の連なる参道が見えてくる。見慣れた銀朱駅の駅舎が目に入ると、阿呂江の胸にぴりりと緊張が張りつめた。
対面の時は近い。父の死を受け止め、受け入れねばなるまい。阿呂江は深く、深く息をつく。
鳥居の並びを横目にしたのを最後に、阿呂江の記憶は少しばかり飛んだ。どこをどう駆けたものか。事ここに至っては息を切らせてついてくる管狐を気づかう余裕もない。
片夏村を駆け抜け、屋敷へ飛び込む。ひっきりなしに鳴っている黒電話の付喪神を横目に廊下を抜け、軋む板張りを抜け、離れの畳を踏みしめた。
「父……うえ」
白面に赤いくまどり模様が、いくらか色褪せて感じる。白銀の野もかくやと豊かな九つの尾も、今や力なく寝そべっていた。とはいえ玉水のなきがらは静かに横たわり、まるで今にも起き上がり愛娘を抱擁せんばかりに安らかに見えた。
「父上」
膝をつき、白毛へ触れる。毛並みに力はなく、皮膚は固く阿呂江の手のひらを押し返した。
ちー、ちー。息女の帰郷に管狐たちも集い、屋敷に住まうあやかしたちも続々と顔を見せる。
「ロエちゃん……帰ったのね」
「! 母上」
よろめく母の恰幅良い身体を抱きとめた。片夏 慈愛瑠。目元は赤く腫れ、頭の狐耳も力なく垂れ下がっている。昨夜の遅くに着いたというが、それからずっと泣き明かしていたのだろう。
つとめて弱々しき己を胸にしまい込み、阿呂江は凛として問うた。
「母上。葬儀の支度はいかように? つつがなく進んでおりますか」
「え? ああ……そうね。そろそろ……送り火を、しなければね。玉水様を……」
わっと泣き伏せ、母は父のなきがらへ縋る。もとよりおっとりとした気質が、夫の急逝にはすっかり参っていると見える。この弱りようでは、葬儀の準備などまるで進んではいないだろう。
泣き暮れるのは母ばかりではなかった。父玉水の人望たるや、集う使用人たちも端から涙を流すばかり。
阿呂江は。
「……ひなげし!」
「はっ、はい!」
まだ若い妖狐を呼びつけ、てきぱきと指示を与えた。
「母上に床を用意しておくれ。すっかり弱っているから、薬湯も頼む」
「か、かしこまりました……」
「蓮華は片夏温泉の女将へつなぎを! あの方は顔が広い。狐火を扱える者を見繕い寄越していただくよう伝えるのじゃ」
「分かりました。おまかせを、お嬢さま」
「あけびは屋敷を整えておくれ。弔問客をもてなさねばならぬ。使用人は好きに使ってよい」
「かしこまりました!」
「クダたち、集まれい! お主らは村の各区長らへ、父の身罷ったことを伝えるのじゃ。頼んだぞ」
ちー、ちー!
「そら、みなすぐに動け! 呆けておる暇はないぞ!」
「「「はいっ!」」」
示す者あらば屋敷は回る。いずれも優秀なあやかしなのだ。ただ、その上に立つ主の存在があまりに大きく、喪失の多大に打ちのめされているだけなのだ。
使用人らはまたたく間に散り、にわかに静けさを取り戻した離れへ、伏した父とふたりきり。
「…………っ」
口元を引き締める。奥歯を食いしばる。
まだだ。まだ、泣くわけにはいかない。
1
2
3
4
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
お狐奇譚 片夏村縁起
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
動物・自然
神話・伝説
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年04月19日
参加申し込みの期限
2023年04月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年04月26日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!