this frame prevents back forward cache
0
0
はじめての方へ
ヘルプ
ログイン
\ オーバータイム!/
種族
学年:職業
00月00日生 00歳
AAA000000
ホームトップ
おしらせ
新着通知
はじめての方へ
遊び方
世界設定
キャラクター一覧
キャラクター検索
キャラクター作成
らっポ
チケット
コミュニティトップ(検索)
コミュニティ一覧
公式コミュニティ一覧
公開トピック一覧
コミュニティ書き込み検索
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
イラストトップ
イラスト一覧
イラスト検索
イラストレーター一覧
イラストレーター検索
自作イラスト一覧
アイテム一覧(検索)
マイリスト一覧(検索)
寝子島(全景)
寝子島(地図)
寝子島(セカンドマップ)
寝子島高校
お狐奇譚 片夏村縁起
<< もどる
1
2
3
4
つぎへ >>
【再会】
送り火の夜が明けて二日ほどを、阿呂江はひどく虚脱に過ごした。霊界の空に紫炎の燐光きらめく光景が目に焼き付いて離れない。いつまでも光が瞬くかのようだ。まぶたの奥がしびれて動けない。離れの父の特等席に座り、寝ころび、自室に戻っては眠るでもなく覚醒するでもなく、ただひたすらに呆ける。それを繰り返した。
やらねばならないことは山積みしている。片夏村観光協会会長の席は空席となり、しばらくは片夏温泉の女将が代行してくれることになってはいるが、本来は母慈愛瑠か阿呂江が担うのが筋だろう。母はあのような調子だし、阿呂江が適任だ。そのはずだ。村が円滑に回りこれまでどおり観光客を受け入れてゆくためすぐにでも立ち上がり、関係者をひとところに集め今後について協議せねばなるまい。
そのはずなのだが、心は重たく厚く曇り、鈍り、動けなかった。
使用人らは時折飯を運んでくるくらいで、気を使ってか声をかけてはこない。寂しくもあるがそれがありがたかった。今は誰にも顔を見られたくない。
三日目になり、少しばかり頭が冷えた。思い出を回顧する余裕が生まれた。
父の変化の術は実に神がかっていた。幼い阿呂江に得意がって実演し、率直にすぎる反応を楽しんでいた。大猪に化け、龍に化け鳳凰に化け、信楽焼に化けて阿呂江を笑わせ、巨大な二つ首のうわばみに化けて変化術への畏敬を養った。
片夏村の長。偉大なる玉水。父はひとかたならぬ人望の持ち主でもあった。村のあやかしたちはみな彼を慕って集ったようなものだ。狐のみならず、狸も、幽霊も、鬼も、みなが一目置いていた。それはひとえに彼の変化の巧みあってのことでもありながら、時に優しく包み込み、時に笑い転げるほど面白く、厳しい叱咤で鼓舞する……彼自身が有徳の人、いや狐であったことに他ならない。
押し潰されそうだ。その存在の大きさたるや。どれほど阿呂江が研鑽を積み、あやかしとして見識を深めれば届くだろうか。父ほどに変化に長け、あやかしの惹かれるあやかしに……自分が? なれるのだろうか? いつか……届くのだろうか?
屋敷のみなも村のだれもかれも、信頼を失い全て去り、ひとり呆然自失に歩く己を想像した。なんと寒々しく虚しいのだろう。これから阿呂江が手腕を発揮できねばそうならないとも限らない。事のほか差し迫った、現実味あるイメージだ。
とはいえ阿呂江ひとりに押し付けるような浅慮な者も里にはおるまいし、図らずとも助けの手は差し伸べられよう。いずれも気のいい者たちだと頭では分かっている、しかし不穏な妄想は止まらなかった。冷えたはずの頭は再び重苦しい熱を帯びてぐるりぐるりと巡り出す。
父と母と幼い自分、美しくおぼろげな遠い日の思い出ばかりが浮かんでは霧消してゆく。モノクロ写真のように一枚、また一枚。ああ、あの光景はずいぶんとせがんで、翼もつ天馬に変化してもらった時の。
「……う」
堰を切ってあふれだす。あらゆる感情がないまぜとなった、儚く遠く、ひどくみじめで寂寥に満ち満ちた思いがふくらんでゆく。
「父……うえ……」
奔流が全てをさらい、渦を巻いて理性を薙ぎ払う。思いは飛沫となり千々とちぎれて散ってゆく。
「────────ッ!!」
声を上げ、阿呂江は泣きじゃくった。みっともなく。情けなく、誰はばかることなく。今だけは。幸いにしてここには誰もやってはこない。存分に、気の済むまで泣けばいい。
父を呼び、母の愁嘆を思い、痛哭した。四肢を投げ出し悶えた。世界が引き裂かれるような、耐えがたい痛みだった。
どれほどそうしていただろう。
「……そんなにも泣いてくれるな。まったく、いつまでたっても甘えん坊じゃなあ、阿呂江は」
心安らぐ声だった。いちどきに阿呂江の胸は小波が寄せる程度に平坦となった。
おかしなことは、自室にひとり、そんな声を発する者がいようはずもないことだ。
「え。えっ」
声の主に思い至るまで、しばしの時を要した。確かに聞き覚えがあり、それでいて聞こえるはずのない、懐かしく愛おしい声。
「そんな……なぜ」
「なぜかの。儂にも大いに未練があったというわけか。未熟よな。はっはっは」
信じられぬまま、肩を震わせ振り返る。幻なら消えてくれるな。願いながら。
「…………ちち、うえ?」
白毛に赤いくまどり模様。ふさふさでもふもふの九尾。鋭くも優しげな瞳。
佇むのは大妖玉水、ほかならぬその姿であった。
「父上……ちちうえっ!!」
思わず駆け寄った。あふれだす涙粒も拭わずに、父の白毛めがけ飛び込んだ。もふりと柔らかく全身を抱かれ、
「ぶうっ!?」
抱かれなかった。むしろ阿呂江が抱き締めたのは畳であった。
「!? ……? な? え?」
「すまぬな。我がかいなはもはや、お前を受け止めることはできぬようじゃ」
透けている。気が付けば霊界の空には月明かりが満ち、差し込む月光に玉水の身体は青く透きとおっていた。
父は、幽霊となって戻ったのだった。
<< もどる
1
2
3
4
つぎへ >>
このページにイラストを設定する
シナリオ
シナリオトップ
シナリオ一覧(参加受付中)
シナリオ一覧(すべて)
リアクション一覧
ゲームマスター一覧
ゲームマスター検索
シナリオご利用ガイド
グループ参加ご利用ガイド
シナリオタイプのご案内
お狐奇譚 片夏村縁起
シナリオガイド
リアクション
参加キャラクター一覧
コメントページ
ダイアリー一覧
シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
動物・自然
神話・伝説
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年04月19日
参加申し込みの期限
2023年04月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年04月26日 11時00分
参加キャラクター一覧
もっと!