シナリオ「お狐奇譚 片夏村縁起」

お狐奇譚　片夏村縁起

　片夏玉水。ひとたび化かせば千変万化、変われぬものなどないほどの達人で、治める集落こそ小さくも、妖狐の中の妖狐と呼ばれた大妖であった。
　自慢の父だ。片夏阿呂江にとって、これほど大きな存在は他にない。阿呂江のいやに老成した口ぶりはかの父の影響であったし、里を出て寝子島の暮らしを堪能するようになってからも、その胸に片時も偉大な父の面影が揺らぐことは無かった。

　秋の日だった。斜陽が赤く目を射る。

「栗に焼いも、まつたけ秋刀魚。秋の寝子島もいいもんじゃのう♪」
　季節の深まりがもたらす情緒を、阿呂江はめいっぱいに楽しんだ。
「いやまあ人間の作る食い物なんぞ、大したことないのじゃけどな……おっちゃん、紅いもソフトひとつ！」
「あいよ！　お嬢ちゃん、かわいいからオマケしちゃうぜ。二段ソフトだ！」
「うおーっ☆」

　九夜山の紅葉を眺めつつ甘味など頬張っていると、阿呂江の胸には決まって郷愁が訪れる。
　近頃はめっきり午睡に暮れることの多くなった父は、今も縁側でまどろんでいるだろうか。留守がちな母は今頃どこをさすらっているだろうか。
　幼き日、敬愛してやまぬ父の九尾に埋もれて過ごした思い出に胸をあたためる。

「ふ……たまには顔を見せにゆかねばのう。父も愛娘と離れては寂しかろうて。はっはっは」
　不意に浮かんだ郷里への想いが、予兆だったのだろうか。

　ちー、と鳴いた。
「ん？」
　ちー、ちー。阿呂江の足元に、小さな影が佇んでいた。
「なんじゃ、管狐（クダギツネ）ではないか」
　小間使いの狐のあやかしは、阿呂江の足を伝いひょいひょい駆け上り、手のひらにちょこんと腰を下ろした。
　阿呂江の背を、冷たいなにかが駆け抜けた。嫌な予感がした。里の者が管狐をつなぎに寄越すなど、めったにあることではなかった。
　ちー、ちー。ちー。阿呂江は予兆が正しく訪れたことを知った。

「……父が……」

　もたらされたのは大妖玉水、大往生の報せであった。

　こぉんと狐の鳴き声が、遠く。
　哀しげに、切なげに、風に乗りかすれて消えた。

運営部より

このシナリオはプライベートシナリオです。
以下のＰＣのみ参加することができます。
　
　　▼参加可能ＰＣ
　　・片夏阿呂江さん
　
※その他の方は参加できませんので、ご注意ください。

※このシナリオでは、Ｘキャラ・ＮＰＣが参加ＰＣと同等量で描写されます。（追加料金が必要です）
　参考：ご利用ガイド／プライベートシナリオ（プライベートシナリオの申請方法）

※参加申込み後、アクション投稿期限までに必要な追加料金が差し引かれます。
　らっポ履歴に「プラシナ追加」と表示されて差し引かれるまでは、必要な分を保つようお願いします。

※Ｘキャラのアクションはキャラメでらっかみ！運営部宛てに投稿してください。
　アクション投稿期限まで書き直しは何度でも可能です。最後の１通分（1000文字以内）のみが有効です。

※ＮＰＣのアクションは投稿できません。
　確定ロールにならない程度で絡み方を書くのは自由です（通常のシナリオと同じ）。

ゲームマスターより

担当ゲームマスター

墨谷幽

マスターコメント

　墨谷幽です。
　片夏阿呂江さん、プライベートシナリオのご指名をいただきましてありがとうございます！
　ガイドやマスコメのイメージはご参考までに。自由にお楽しみくださいませ～。

このシナリオの概要

　片夏さんのお父さま、片夏玉水氏の訃報が届きました。
　日課の午睡のさなか、静かに息を引き取ったとのことです。
　片夏さんは故郷へ戻り、父の死と、ある真実に対面します。

　お父さまの葬儀、急ぎ戻られたお母さまとのやりとり、
　また故郷の集落の様子など、アクションは自由にお書きください。
　ご指定の無い部分については、墨谷の判断や想像で補わせていただくかもしれません。

　はたしてふるさとにて、悲しみの果て、阿呂江さんを待つものは……？

ＮＰＣについて

　★片夏玉水（へんげぎょくすい）
　★片夏慈愛瑠（へんげじえる）
　阿呂江さんに加え、上記おふたりが登場します。
　（アクションにセリフ例をいただけるととっても助かります！）
　集落に住む狐のあやかしたちなども、ご指定いただいて構いません。

　その他、もし必要でしたら、上記以外のＮＰＣも登場可能です。
　登録済みのキャラクターなら誰でも、または墨谷のシナリオに登場したＮＰＣでしたら、
　登録・未登録問わず登場ＯＫです。
　自由にご指定くださいませ。

　以上になります。
　それでは、アクションをお待ちしております～！