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お狐奇譚 片夏村縁起
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【父と娘と】
幽霊。霊界にはポピュラーな存在だ。ふわふわと浮いて、半透明で、足が無かったり頭に天使の輪がのっていたりする。片夏村にもいくらか住んでいるし、観光客として訪れる者もいる。
あやかしの幽霊というのも、稀にだが存在すると聞いた。妖怪が死してなお魂を残し、霊界へ舞い戻るとはどういうことだろうか。
その一例が、阿呂江の眼前にあった。
「父上……」
「ふむ、奇妙な感覚じゃな。儂は確かにここにおる、しかしどこか身体は心もとなく……おお。浮いたぞ」
玉水はふわり浮かび上がった。幽霊らしく地に足をつけずふわふわり、移動できるらしい。くるりと宙返りすると、九つの尾が風に舞うようにたなびいた。
静かに目を伏せた阿呂江を、玉水は畳に降り立ち見据えた。
「……申し訳ございません。父上」
「む?」
「阿呂江は……阿呂江はとんだ親不孝者です」
はらりと雫がこぼれた。それを受け止めんとする玉水の前足をすり抜け、雫は畳をぽつぽつと濡らした。
「お言いつけを破り、勝手に村の外へ……寝子島での放蕩三昧。あげくに、父上の死に目にも会えず……」
この数日、ただただ輪を描く思考に囚われていた。抜け出せずもがいていた。心は沈み込み、泥沼にはまったかのようだった。
すっかり弱っていたのだろう。阿呂江の胸は卑屈な思いでいっぱいとなっていた。
「阿呂江は、父上の娘にふさわしくありません」
「なにを言う。そんなことがあるものか」
「いいえ! いいえ、儂はとんだ道楽者じゃ。偉大な父上の名を汚すばかりの、つまらぬ娘で……!」
「これ。聞きなさい。聞くのじゃ、阿呂江」
玉水は苦笑いした。娘の頭を撫でようと前足を伸ばし、もはやそれもかなわぬと思いだしたか、ふうとひとつ息をつく。幽霊もため息はこぼすようだ。
「お前には謝らねばならぬな……儂のわがままで、お前を村へ縛り付けようとしてきた。お前を思ってのことだったが、若いお前にはさぞ息が詰まったことじゃろう」
「な、なにをおっしゃいます。それも父上のお言いつけなればと、なのに儂は事あるごとに外へ」
「それに、な。言っておらなんだことがある」
怪訝そうに首を傾けた阿呂江へ、玉水はひとつ息を整え、絞り出すように告げた。
「晩年の儂はもはや、変化の術、その一切を失っておったのじゃ」
「え……」
「何者も化かせぬ狐が村長などと。お笑い種よ。誰にも明かせぬと心の内にしまい込み、のらりくらりとはぐらかしておった。阿呂江、お前にものう……」
大妖、千変万化の白面九尾の狐。確かにそうだ。その変化の術が失われたとなれば、長を務めるにふさわしいとは言いがたい。狐のあやかしとはそういうものなのだ。
ゆえに黙した。無論、体裁もあろう。父はこう見えて体面を気にするところがある。悪く言えば俗っぽく、しかしだからこそ阿呂江には親しみ湧く、近しい父だった。
彼の思いは容易に理解できた。その上で、阿呂江はしばしの間物言わず、やがて父へと返した。
「……そのようなこと。些末事じゃ。父上」
「ほう。なぜじゃ?」
「気にすることなどありません。隠さずとも良かった、儂には言うてくれてもよかった。変化の術があろうとなかろうと、儂にとって偉大な父には変わりませぬよ」
阿呂江にとって父は父だ。玉水の名が霊界に知られていようとなかろうと。狐であろうと、幽霊となろうと、父であることに変わりはないのだった。
ふにゃ、と阿呂江は脱力した笑みを浮かべた。
「ふふ。父上じゃ。もう二度とお目にかかれぬと思うておった……父上じゃ!」
「今少し、儂はお前とともにあろう。阿呂江よ。心配をかけたな」
「父上……ちちうえっ!」
今度は盛大に涙粒が噴き出したが、もうそれを隠そうとは思わなかった。悲しみではない。喜びの涙であったから。
玉水の復活は、直ちに里のみなへと知らされた。
未だ寝込んでいた慈愛瑠はまっさきに報を受けたが、ショックでひっくり返ってもう一度寝てしまった。起き出したなら狂喜乱舞することだろう。
「では父上、もうしばしは村長を?」
「うむ。儂もいまや幽霊じゃし、変化の術も失われて久しいが、区長らは儂のほかにおらぬと言ってくれたよ。なんとも、儂ごときにもったいなきことじゃ」
「いいえ、やはり片夏村には父上が必要です……今はまだ」
彼の任期は、阿呂江が成人するまでと定められた。翻って、それは阿呂江の決意でもある。いずれふさわしい大妖、偉大な化け狐となった暁には、見事村長を継いで見せよう。そう決めたのだった。
それまでは霊界と人の世を行き来し、さらなる見分を深めるべしとの言質も添えられた。これで大手を振って寝子島へゆくこともできよう。
「次にあちらへ赴いたなら、土産を持ってまいりましょう。今頃は秋、絶品ぐるめが目白押しで……あ、い、いや。もちろん我らが片夏村の名物に比べれば、人間の作る食い物なぞ大したことはないのじゃが!」
「はっはっは。楽しみにしておるよ」
霊界には幽霊が食べられるおばけメニューもあるし、あやかしカフェなどには人間の食べ物の幽霊を作り出すシェフもいると聞く。きっと父にも食べさせてやることができるだろう。
夜が明ける。霊界にも朝が来る。
「さて。儂も、お前も。忙しくなるぞ。覚悟はよいか?」
「はいっ、父上!」
いつもの霊界、青光はらむ曇天。いい空だ。阿呂江は清々しく笑った。
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あとがき
担当マスター:
墨谷幽
ファンレターはマスターページから!
墨谷幽です。
『片夏村縁起』、リアクションをお届けいたします。
霊界はまだまだ謎だらけの世界ですが、片夏さんの故郷はすでにしっかりとした設定があって、とても興味深く拝見させていただきました。
観光地ということで、いろいろと描きがいのありそうなスポットもありますし、楽しいですね。いつか機会があれば、触れさせていただければと思っております。あやかしの営む駄菓子屋さんとか気になる!
今回は阿呂江さんとお父さまの交流となりました。
それぞれに胸の内を吐露して、わだかまりもある程度解消されたかと思います。
阿呂江さんはもちろん、幽霊となった玉水さんの今後も、非常に楽しみにしております。
それでは、今回はプライベートシナリオの申請、まことにありがとうございました。
お疲れさまでした!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
プライベートシナリオSS(500)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
動物・自然
神話・伝説
NPC交流
定員
1人
参加キャラクター数
1人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年04月19日
参加申し込みの期限
2023年04月26日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年04月26日 11時00分
参加キャラクター一覧
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