サロネコ1371番外編：和の甘露とちょこれぃとの夜｜リアクション

サロネコ1371番外編：和の甘露とちょこれぃとの夜

＞大切な人と一緒に

「いい雰囲気ね」「そうだね」
　三折部朝衣は婚約者の住沢遥人と共に会場を訪れていた。
　朝衣は町長の秘書であり、遥人は星ヶ丘の洋食レストラン『青猫亭』のシェフ。その為、サロネコ当日はそれぞれ仕事で多忙であった。故に参加できなかったのもあり、このイベントは渡りに船だった。
「でも、『青猫亭』で提供していたチョコレートを使った料理も、食べてみたかったな」
「だったら、何かの機会に作ろう」
　と腕を組んだ遥人に言えば、彼は穏やかな笑顔で了承した。
　そんな二人が口にしているのは、チョコレートがけのポテトチップスと日本酒。そして、チョコレートと生ハムのカナッペ。生ハムのしっとり感と柔らかめのビターチョコレートが意外にも日本酒に合うし、塩味のポテトチップスにミルクチョコレートの甘さが上手く絡む。口にしている日本酒はお米が持つ味やコクを感じさせ、そのふくよかな味わいがすべてを包んで落ち着かせる。
　ドキドキしながら口にしていた朝衣は僅かに目を細め口元を綻ばせた。
　その横で、チョコレートと料理の相性など蘊蓄（うんちく）を優しい声色で語る婚約者。合間に聞こえる和ロックも相まって、彼の横顔が普段と少し違う魅力を感じたかもしれない。
　それを聞きながら相槌を打ち、彼女は別の日本酒を貰って一口。今度はさっぱりした口当たりで香りも薄目。だが、これと組み合わせるとまた味わいが変わる。
「こっちも飲んでみる？」
「まだ飲んでいなかったし、飲みたいな」
　彼女が進めると、遥人は嬉しそうに微笑んだ。
　ふと、聞き覚えのある声がして振り返る。と、見覚えのある女性が、紳士的なふるまいの男性と共にお酒を選んでいた。よく見れば女性の方は久保田美和である。
　彼女も二人に気付き、にっこりと微笑んだ。
「こんばんは、いい夜ね。　朝衣ちゃん、その人彼氏なの？」
「えぇ、まあ」
　そう穏やかに頷く朝衣に、遥人は笑顔で自己紹介する。美和は「素敵な人ね」と優しく微笑んだ。傍らの男性――黒崎俊介はそんな美和の様子に苦笑する。
　と、そこで遥人がそっと問いかける。
「お二人も、デートですか？」
「そ、それは……同じ学校の先生に誘われて……」
　美和がほんのり頬を赤くし、言いよどむ横で俊介は「似たようなものですよ」と頷いた。
（もしかして……）
　朝衣が何か感じ取ると、遥人も同じなのか「そうじゃない？」というような視線を向ける。二人は、なんだかいい感じの両者を見てほんのりと暖かい眼差しになった。

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