【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと｜リアクション

【寝子祭】届け銀河の涯てまで！　輝きをキミと

（去年は中学生で、客席から見てたのよね）
　仙藤蒼は、友達の宮内詠美と共にステージの上にいた。
　来年は私もミスコンに出ちゃおうかな、なんて言っていたものだが、意外な形で現実になった。
　詠美と親しくなったのは、水泳部のOGである姉と一緒に泳ぎを教えたのがきっかけだ。
　熱意はあるのに飲み込みが遅く、力みすぎる彼女にはずいぶん手を焼いた。
　衝突もしたけれど、詠美はとても上達し、蒼は教え方を反省して仲直りしたのだ。

（行くよ）
　蒼の目配せに、詠美が頷く。
　二人がそろって着ているのは、オンラインゲームの「星の踊り子」の衣装だ。

　先ほどストリートダンスのステージを踏んだ後で、今度はオンラインゲームの戦闘時の演武を披露する。
　時にゆっくりと、時に激しく、緩急をつけて。
　水泳の時と同じように真剣で妥協のない詠美の動き。
　けれど今、彼女の肩からは力が抜けていた。
　しなやかで自在なその動きはとてもキラキラしていて。
（負けられない）
　と蒼も指の先まで意識し、気持ちを込めて美しく伸ばす。
　二人の息はぴったりだ。
　その演武の中に込めた思いは──
（今が一番最高！　ってこと）

　拍手喝采を受け、演武は終わった。
「星のきらめきを彷彿とさせるような美しいパフォーマンスでしたね」
　司会の絢の言葉に、客席の皆が頷いていた。

　猫耳のあおいの可愛さに、顔から湯気出るまま一緒に歩いていた八神修だったが。
「キャッチ！」
　と知り合いに連行され、ミスターコンテストに出場してほしいと頼まれた。
「キラキラした幸せを叫んでほしい？　幸せそうに見えたなら、それは嬉しいが」
　少し照れる修。
「修君ならミスターにぴったりだよ」
　あおいも言う。
「ま、最後の寝子祭だ。俺達の三年間を叫ぶか。もちろんあおいも一緒に出てくれよ」
「えっ？　でも服は……」
「服か。そうだな、制服しかないね。この服と歩んできたんだもんな」
　修は周囲を見回し、出演者のために用意された金飾緒を見つけた。
「これで少しは華やかになるかな」
　修があおいに、あおいが修の制服に飾りを付けあう。
「これでよし」

　ステージに上がった修は、あおいと共に回ったりしてポーズを決める。
　打ち合わせはしていないが、自然と手を繋ぎ、ダンスのように二人は動いた。
　マイクを向けられた修は、堂々と伝える。
「三年間最高の高校生活だった。出会ったこと、学んだこと、全てがキラキラした思い出になって俺達になった」
　そしてあおいのほうに視線を向け、続ける。
「春からは新しい世界。寂しいことも辛いこともあるだろう。けど、この絆が力をくれるから、俺たちは頑張れる。そう信じる」
　修は、あおいと繋いだ手を上に掲げて、締めくくった。
「有難う寝子島、有難う寝子高！」
　深く礼をする修とあおいに、拍手が惜しみなく注がれた。