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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
秋桜への宣誓
県道に出さえすれば、高台にそびえる灯台を目印にバイクを走らせるだけ。
さすがの京極 花音も、今回ばかりは目的地に迷わず着くことが出来てホッとする。
（恋人たちの丘、か……）
待ち合わせている人はいない、ただの散歩だ。それでも、いつか彼女と――そう思い描きたくなる人がいる。
よくバイト先の花屋に寄ってくれる、花が好きな人だから。きっとこの眼前に広がる花畑を見たら、喜んでくれるに違いない。
「仕入れてる花と、違って見えるもんだな」
例えばそろそろ見頃も終わるグラジオラス。店では夏の花という扱いだが、秋頃まで楽しめる花だ。さすがに勢いは衰えてきているが、それでもバケツに盛られているものと比べても、剣のような凜々しさは劣ってない。
職業柄、有名どころの花言葉は気にするようにはしていたが、この花はなんだっただろうか。薔薇なんかは色ごとに細かくわかれていたりするけれど……。
（花畑を案内するなら、そういうのも考えて歩かないとな）
とはいえ方向音痴な花音には、思考を巡らせ丘を歩き回るなど少々難しいかもしれない。それ以前に、一体どうやって彼女を誘い出すのだ。
……まあ、思うくらいはいいだろう。そうしてネームプレートを見た花音は顔を強張らせた。
――『用心』『密会』
二度見した。目まで擦った。
なかなか特徴的な花言葉しかなかったが、その中でも群を抜いている。
（もし、彼女が）
どこの馬の骨ともわからぬ男と密会していたら。
あれだけ可愛いのだ、彼氏がいたっておかしくない。ただ、理解できるのと納得できるのとは話が別だ。
この丘に来て微笑み合うならば、彼女を幸せにできる男でなければならないし、鐘を鳴らすなら生涯守り通せる男でなければならない。用心しろということは、相手は彼女に相応しくない可能性まである。
（……そうだっ！）
猫神様に祈ろう。確か、もう少し登った先に南京錠をかける柵が並んでいるはずだ。そこでは、意中の相手との縁を深めることか、良き相手と巡り会うことを願えるはず。
自分との縁を深めるよう願いたいところだが、彼女に相応しい男であるかは第三の目も必要だろう。それを判断するのが良縁を結ぶ猫神様であれば、間違いないはず。
花音は南京錠を手に入れるため、土産物屋に足を向けた。悠長に花を眺めるのは後回しだ、今は何が何でも南京錠を手に入れて、彼女の良縁を願うのみ。
数多ある縁の中から、もし自分との縁を強固にしてくれたのなら、もう少し自信を持って行動出来るはず。
（確か南京錠には――）
店先には、色とりどり形も様々な南京錠が売られている。色々と書き込むためのテーブルに油性ペンも用意されていて、願掛けをする柵まで一本道。とても親切設計だ。
……しかし、花音は重大なことを思い出した。
彼女が可愛らしい物を好きなこと、料理は砂糖と塩を取り違えるような 壊滅的 ちょっと個性的な味付けをすることは知っている。
ただ、それだけだ。花音は彼女が暁月 静という名前であるということすら知らない。つまり、願掛けに必要なイニシャルがわからないのだ。
（こうなったら仕方ないな）
――帰ろう
喫茶店にでも寄って、テラス席からぼんやりと花を眺めて。
元々、その予定だったんだ、残念なことなど何一つない。丁度、恋人たちで溢れかえる丘に１人では、秋風が染みると思っていたところなんだ。
そうやって心の内で言い聞かせていると、願望が見えてくるらしい。花畑に佇む黒髪の美少女が……いや、間違いない、彼女だ！
（でも、なんで）
こんなデートスポット、１人で訪れるだろうか。
誰かを待っている？ それとも片想いの相手がいる？ そうでもなければ、こんな場所にこないだろう。
当然のように思い込む花音は、自分が丘に訪れた理由を忘れてしまっているらしい。食い入るように彼女を見つめ――そして、見てしまったのだ。
「え……」
高台から駆けてきた男が、親しげに声をかける。手には何やら用紙を握りしめていて、静は嬉しそうに微笑み返していた。
思わず、土産物屋を振り返る。そこには似たような物が掲示されていた。
（恋人……宣誓書!?）
サンプルには小さな文字で『※記念品のため効力はもちません』とは書かれているが、きっと花音には見えていない。いや、見えていたとしたって再度彼女を見ただろう。
静が宣誓書を本当に喜んでいるのか、確かめるために。
（喜んでは、いる……んだろう、けど……？）
ぐっと拳を作り、何かを口にする彼女へ男は何度も頭を下げて、にこやかな顔で去って行く。
連れでは無いのなら、その男は誰なのか。
それは静にもわからない。
ただついさっき、踏ん切りのつかない見ず知らずの男に発破をかけたことだけは、間違いなかった。
さすがの京極 花音も、今回ばかりは目的地に迷わず着くことが出来てホッとする。
（恋人たちの丘、か……）
待ち合わせている人はいない、ただの散歩だ。それでも、いつか彼女と――そう思い描きたくなる人がいる。
よくバイト先の花屋に寄ってくれる、花が好きな人だから。きっとこの眼前に広がる花畑を見たら、喜んでくれるに違いない。
「仕入れてる花と、違って見えるもんだな」
例えばそろそろ見頃も終わるグラジオラス。店では夏の花という扱いだが、秋頃まで楽しめる花だ。さすがに勢いは衰えてきているが、それでもバケツに盛られているものと比べても、剣のような凜々しさは劣ってない。
職業柄、有名どころの花言葉は気にするようにはしていたが、この花はなんだっただろうか。薔薇なんかは色ごとに細かくわかれていたりするけれど……。
（花畑を案内するなら、そういうのも考えて歩かないとな）
とはいえ方向音痴な花音には、思考を巡らせ丘を歩き回るなど少々難しいかもしれない。それ以前に、一体どうやって彼女を誘い出すのだ。
……まあ、思うくらいはいいだろう。そうしてネームプレートを見た花音は顔を強張らせた。
――『用心』『密会』
二度見した。目まで擦った。
なかなか特徴的な花言葉しかなかったが、その中でも群を抜いている。
（もし、彼女が）
どこの馬の骨ともわからぬ男と密会していたら。
あれだけ可愛いのだ、彼氏がいたっておかしくない。ただ、理解できるのと納得できるのとは話が別だ。
この丘に来て微笑み合うならば、彼女を幸せにできる男でなければならないし、鐘を鳴らすなら生涯守り通せる男でなければならない。用心しろということは、相手は彼女に相応しくない可能性まである。
（……そうだっ！）
猫神様に祈ろう。確か、もう少し登った先に南京錠をかける柵が並んでいるはずだ。そこでは、意中の相手との縁を深めることか、良き相手と巡り会うことを願えるはず。
自分との縁を深めるよう願いたいところだが、彼女に相応しい男であるかは第三の目も必要だろう。それを判断するのが良縁を結ぶ猫神様であれば、間違いないはず。
花音は南京錠を手に入れるため、土産物屋に足を向けた。悠長に花を眺めるのは後回しだ、今は何が何でも南京錠を手に入れて、彼女の良縁を願うのみ。
数多ある縁の中から、もし自分との縁を強固にしてくれたのなら、もう少し自信を持って行動出来るはず。
（確か南京錠には――）
店先には、色とりどり形も様々な南京錠が売られている。色々と書き込むためのテーブルに油性ペンも用意されていて、願掛けをする柵まで一本道。とても親切設計だ。
……しかし、花音は重大なことを思い出した。
彼女が可愛らしい物を好きなこと、料理は砂糖と塩を取り違えるような
ただ、それだけだ。花音は彼女が暁月 静という名前であるということすら知らない。つまり、願掛けに必要なイニシャルがわからないのだ。
（こうなったら仕方ないな）
――帰ろう
喫茶店にでも寄って、テラス席からぼんやりと花を眺めて。
元々、その予定だったんだ、残念なことなど何一つない。丁度、恋人たちで溢れかえる丘に１人では、秋風が染みると思っていたところなんだ。
そうやって心の内で言い聞かせていると、願望が見えてくるらしい。花畑に佇む黒髪の美少女が……いや、間違いない、彼女だ！
（でも、なんで）
こんなデートスポット、１人で訪れるだろうか。
誰かを待っている？ それとも片想いの相手がいる？ そうでもなければ、こんな場所にこないだろう。
当然のように思い込む花音は、自分が丘に訪れた理由を忘れてしまっているらしい。食い入るように彼女を見つめ――そして、見てしまったのだ。
「え……」
高台から駆けてきた男が、親しげに声をかける。手には何やら用紙を握りしめていて、静は嬉しそうに微笑み返していた。
思わず、土産物屋を振り返る。そこには似たような物が掲示されていた。
（恋人……宣誓書!?）
サンプルには小さな文字で『※記念品のため効力はもちません』とは書かれているが、きっと花音には見えていない。いや、見えていたとしたって再度彼女を見ただろう。
静が宣誓書を本当に喜んでいるのか、確かめるために。
（喜んでは、いる……んだろう、けど……？）
ぐっと拳を作り、何かを口にする彼女へ男は何度も頭を下げて、にこやかな顔で去って行く。
連れでは無いのなら、その男は誰なのか。
それは静にもわからない。
ただついさっき、踏ん切りのつかない見ず知らずの男に発破をかけたことだけは、間違いなかった。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年03月14日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年03月21日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年03月21日 11時00分
