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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
セイレーンが歌う夜
冴来の瞳から光が消える。彼女の目に入った人々が、彼女にとっては雑音であり邪魔な存在以外の何者でもなかった。沸々と沸き起こるのは怒りか、悪意か。冴来はゆらりと足を進め、暗い笑顔を浮かべる。
「なに、この人達。凄く、邪魔。すっごくすっごく邪魔……」
この歌は自分だけの物だ。皆、海に落ちて死んでしまえばいい。苦悶に満ちた顔のまま沈んでいく様はきっと違いない……！ 仄暗い想いが冴来の心をより震わせ、にこり、と口元に笑みを浮かべて進んでいく。
「皆嫌い。大ッ嫌い。だから全部壊してあげるわ！」
そう言って彼女は進む。その目の先にいた存在を、海に突き落とすために……！
一方、歌によって岬の方へと行こうとする影もあった。夢宮 瑠奈は歌の聞こえる方へと歩いていくうちに、心の深い場所で考察を重ねていた。
（キーワードはセイレーン。語源が宿す意味の１つは『干上がる』だから、もしかしたら何らかの事故で、岬へ打ち上げられた魚なのかも）
海からの歌から連想し、推測し、浮かんだのは海へ帰りたかった「魚」の存在。瑠奈はあるきながらもさらに考察をすすめる。
（だから、水がないから掻く事もできず、『帰りたい』という想いが神魂と結びついて……この嵐を呼んで……水を呼んで……）
足は、岬へと進んでいく。裸足のまま踏み込む道は、この季節にしてはやけに冷たく感じた。僅かに痛みが走るのは、途中で足を何かで切ったからだろうか。
（帰る為には身体が必要だから探していて、自分の姿を忘れているから、あたしたちが同調するのかもしれませんね。行方不明になった女性もこうして呼ばれて……けれども見つけられず、そのまま海へ……）
瑠奈の足は、岬へと進んでいた。けれども、自然と海の方向へ進んでいく。ハイライトの消えた筈の目が、わずかに揺らいだ。感触とぬくもりから、誰かに手を引かれ引き止められたようだった。
「えっ？」
気が付いた時、彼女の傍らには邪衣 士がいた。彼は酷く心配した顔で瑠奈を見つめていた。
「なぜこんな所にいるんだ、夢宮」
「それはこっちのセリフだよ、邪衣くん。……と言いたい所なんだけど……」
瑠奈が事情を説明すると、士は小さくため息をつく。彼は珍しく迷子になる事もなく、この場所へたどり着いていた。雲行きの怪しい中、岬へと向かっていく女性たちの話を聴き、嫌な予感がしてやってきたはいいのだが。
瑠奈に帰るよう促そうとした士だが、彼は見覚えのある姿を目撃する。それは、よくつるんでいる同学年の桃原 空音。彼女もふらふらと海の方へと進んでいく。
「えっ？！ 空音っちが海へ？！」
「……何やってんだ、アイツは！」
士は瑠奈の手を引き、追いかける。ところが、空音は気づかないのか、振り返る事なく海へ向かっていく。そして、遂に階段を下りきってしまった。
（誰かが溺れてる？ だったら、あの時みたいに助けなくちゃ！）
歌に惹かれるがままに、空音は進んでいく。とても歌声の主が心配だったから、どうにかして助けたかった。けれども、士の声がして振り返る。
（ほよ？ 士くんってば何怖い顔してんだろ？ 瑠奈ちゃんも……。大丈夫だよ、今度はすぐに上がってくるから）
空音は、海に目を戻す。彼女はそのまま海へ進んでいき……落ちると同時に波に飲まれてしまった。
「！？ 桃原！！」「空音っちーっ！！」
荒れ始めた海は冷たく、とても暗かった。波に飲まれた空音はその中で身を固くし、身動き一つ取れなかった。
（行かなくちゃ、でも、体が……！？）
パニックになる空音の脳裏が、白く染まり、やがて青空が見えた。どこかノイズ混じりの光景はエノコロ岬。そこで若い男女が向き合っている。音は聞こえないが、２人はもみ合っているように見えた。
（えっ？ 何、この映像は？！）
次の瞬間、空音は息を呑む。目の前で女性は突き落とされ、男性は逃げていく光景に。そして、聞こえたのは歌声と同じ声。
――家族になってくれるって言ったのに……。
それを最後に、空音の意識は暗転した。
気を失った空音を、士は海へ入って助け出す。彼は水を飲んでいないか等を調べると、瑠奈が傍にいるのも忘れ、空音を抱きしめた。
（えっ……？ 前にも、こんな事あったような……）
その瞬間、ぼんやりとした空音の脳裏に浮かび上がる、おぼろげな記憶。そして、唇に広がったのは優しくも暖かな感触。けれどもそれは乙女にとってあまりにも繊細な物であった。
歌声に導かれ、嵐がやってくる。
どんよりとした曇り空から、冷たい雨粒がぽつぽつ落ちて……やがて音を立てて降り出した。
「なに、この人達。凄く、邪魔。すっごくすっごく邪魔……」
この歌は自分だけの物だ。皆、海に落ちて死んでしまえばいい。苦悶に満ちた顔のまま沈んでいく様はきっと違いない……！ 仄暗い想いが冴来の心をより震わせ、にこり、と口元に笑みを浮かべて進んでいく。
「皆嫌い。大ッ嫌い。だから全部壊してあげるわ！」
そう言って彼女は進む。その目の先にいた存在を、海に突き落とすために……！
一方、歌によって岬の方へと行こうとする影もあった。夢宮 瑠奈は歌の聞こえる方へと歩いていくうちに、心の深い場所で考察を重ねていた。
（キーワードはセイレーン。語源が宿す意味の１つは『干上がる』だから、もしかしたら何らかの事故で、岬へ打ち上げられた魚なのかも）
海からの歌から連想し、推測し、浮かんだのは海へ帰りたかった「魚」の存在。瑠奈はあるきながらもさらに考察をすすめる。
（だから、水がないから掻く事もできず、『帰りたい』という想いが神魂と結びついて……この嵐を呼んで……水を呼んで……）
足は、岬へと進んでいく。裸足のまま踏み込む道は、この季節にしてはやけに冷たく感じた。僅かに痛みが走るのは、途中で足を何かで切ったからだろうか。
（帰る為には身体が必要だから探していて、自分の姿を忘れているから、あたしたちが同調するのかもしれませんね。行方不明になった女性もこうして呼ばれて……けれども見つけられず、そのまま海へ……）
瑠奈の足は、岬へと進んでいた。けれども、自然と海の方向へ進んでいく。ハイライトの消えた筈の目が、わずかに揺らいだ。感触とぬくもりから、誰かに手を引かれ引き止められたようだった。
「えっ？」
気が付いた時、彼女の傍らには邪衣 士がいた。彼は酷く心配した顔で瑠奈を見つめていた。
「なぜこんな所にいるんだ、夢宮」
「それはこっちのセリフだよ、邪衣くん。……と言いたい所なんだけど……」
瑠奈が事情を説明すると、士は小さくため息をつく。彼は珍しく迷子になる事もなく、この場所へたどり着いていた。雲行きの怪しい中、岬へと向かっていく女性たちの話を聴き、嫌な予感がしてやってきたはいいのだが。
瑠奈に帰るよう促そうとした士だが、彼は見覚えのある姿を目撃する。それは、よくつるんでいる同学年の桃原 空音。彼女もふらふらと海の方へと進んでいく。
「えっ？！ 空音っちが海へ？！」
「……何やってんだ、アイツは！」
士は瑠奈の手を引き、追いかける。ところが、空音は気づかないのか、振り返る事なく海へ向かっていく。そして、遂に階段を下りきってしまった。
（誰かが溺れてる？ だったら、あの時みたいに助けなくちゃ！）
歌に惹かれるがままに、空音は進んでいく。とても歌声の主が心配だったから、どうにかして助けたかった。けれども、士の声がして振り返る。
（ほよ？ 士くんってば何怖い顔してんだろ？ 瑠奈ちゃんも……。大丈夫だよ、今度はすぐに上がってくるから）
空音は、海に目を戻す。彼女はそのまま海へ進んでいき……落ちると同時に波に飲まれてしまった。
「！？ 桃原！！」「空音っちーっ！！」
荒れ始めた海は冷たく、とても暗かった。波に飲まれた空音はその中で身を固くし、身動き一つ取れなかった。
（行かなくちゃ、でも、体が……！？）
パニックになる空音の脳裏が、白く染まり、やがて青空が見えた。どこかノイズ混じりの光景はエノコロ岬。そこで若い男女が向き合っている。音は聞こえないが、２人はもみ合っているように見えた。
（えっ？ 何、この映像は？！）
次の瞬間、空音は息を呑む。目の前で女性は突き落とされ、男性は逃げていく光景に。そして、聞こえたのは歌声と同じ声。
――家族になってくれるって言ったのに……。
それを最後に、空音の意識は暗転した。
気を失った空音を、士は海へ入って助け出す。彼は水を飲んでいないか等を調べると、瑠奈が傍にいるのも忘れ、空音を抱きしめた。
（えっ……？ 前にも、こんな事あったような……）
その瞬間、ぼんやりとした空音の脳裏に浮かび上がる、おぼろげな記憶。そして、唇に広がったのは優しくも暖かな感触。けれどもそれは乙女にとってあまりにも繊細な物であった。
歌声に導かれ、嵐がやってくる。
どんよりとした曇り空から、冷たい雨粒がぽつぽつ落ちて……やがて音を立てて降り出した。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2013年11月08日
- 参加申し込みの期限
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- 2013年11月15日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2013年11月15日 11時00分
