ちょこでろろランドでチョコ地獄！ in 裏サロネコ1371｜リアクション

ちょこでろろランドでチョコ地獄！ in 裏サロネコ1371

【チョコっとバトル・ドラゴン編（１）】

　突然始まった、ちょこでろろアワー！　綾辻綾花はあちこちに据えられた拡声器から聞こえる滴の声にちょっぴり、神妙な顔も浮かべつつ。
「あ、良かった。動きそうですよ、珪先生！」
　やってきたのは先ほどレースを楽しんだ、ゴーカート場です。楽しんだといっても、チョコライオンに追いかけながらではありましたけれど。
「って、また来ました！？」
「早く乗って、綾辻さん！　出発するよ！」
　珪先生が運転席、綾花は助手席へ。再びチョコライオンに追われながらも、発進！
　といって今度は、コースを走るばかりではありません。
「ちょっと手荒くいくよ……！」
　珪はおもむろにバックで突っ込み、チョコライオンに激突！　ぱかーんとチョコを割りながらそのまま後進、コースの壁チョコをもぶち抜いて、外へ。そのまま逃げちゃおう、という作戦です。
「とりあえず遊園地の敷地外へ出ようか。その後はどこまでいけるか……やれやれ、ハードな初ドライブになりそうだね。綾辻さん」
「あはは。でも、珪先生がいっしょですし。怖くないですよ」
　なんて言ったそばからチョコライオンが飛び出してきて、綾花はきゃあと叫んで珪先生へしがみつき、先生はアクセルベタ踏み。どぎゅん！　と急発進して引き離します。
　このまま、どこまでも。
（……それもしあわせ、かも？）
　運転に集中する珪先生に、綾花はぴたり寄り添ったまま、夜のぬるい風に目を細めました。
　ああ、腕に伝わるこのぬくもり。ほっこり♪

「まー、現実にお菓子の家は成立しねーと思うんだよな。衛生面とか。溶けるし管理できねーし」
「同意だな。この遊園地もまた、夢まぼろしのようなものか」
「せつないねー」
　並ぶ桜井ラッセル、八神修に七夜あおい。
　見上げた先にはばっさばっさと翼はためかせる、チョコドラゴンの姿がありました。
「……ってことで、避けろー！！」
　くわっとドラゴンが口を開いたもので、叫んだラッセルの声で彼らは慌てて飛び退きます。吐き出されたチョコブレスは甘くて実にいい匂いですけれど、あえて全身に浴びたくはありません。
「翼が生えとるけん、逃げても追いかけてきますよね……」
　倉前七瀬はむむむっと眉を寄せ、上空を旋回するドラゴンを注視しながら考えます。うわっ！　ブレスを間一髪で避けて、
「そうだ……本への書き込みで、場を支配できれば！」
「お、なにか作戦があるのか？」
　期待の目を向ける修とあおいに、七瀬はこくり。

　ろっこん発動！　召喚された一冊の本を開きますと。
「ふむふむ？　『これはとある噴水にまつわる物語。とある街の噴水から、突如湧き出したチョコレートの奔流はとどまることなく噴き上げ続け、やがて街中をチョコで埋め尽くし……』、夢があるような怖い話のような。うーむ、どう書き込んだものか」
　七瀬の能力は、場の空気に合った本を呼び出すこと。そしてそこへ一文を加えることで、周囲の雰囲気をなんとな～く、変えることができるという力です。ここでうまく、気の利いたセンテンスを書き入れることができれば、窮地を脱することができるかもしれません。
　はてどんな一文を添えたものか。どんな雰囲気ならあのチョコドラゴンをいさめることができるだろうか、う～～～むむむ。
「お～い！　なんかやるなら早くしねーとやばいぜー！？　お、お～い！？」
　ラッセルが声を上げるも、迷いに暮れる七瀬はふむーっと鼻から息を吐き出し、ペン回しばかりがはかどりました。
　だもんで、
「『チョコレートは流れを増し、邪悪な敵を押し流し……』っていうのは、なかなかよかとですかね。あっ」
「倉前ーーー！！」
「七瀬くーーーん！！」
　チョコブレスどばーーーっ！
「あばばばばば」
　あえなく全身チョコまみれ。七瀬はそのままフェードアウトとなりました……南無！

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