waに染まる猪口齢糖と伝統技術の饗宴 in サロネコ1371｜リアクション

waに染まる猪口齢糖と伝統技術の饗宴 in サロネコ1371

＊気軽に、仲良し同士で

（チョコレートの祭典か。男一人でチョコを食いに来るのもなんだしなぁ。まぁ、バレンタインでもないし気軽に彼女を誘っても問題ないよな？）

　響蒼留人は同好会が一緒でよくつるむマーガレット・ライカーを「珍しいチョコが食えるらしいから一緒にどうだ？」と誘っていた。興味を持ったマーガレットは笑顔で応じ、現在に至る。
BGMは和ロックから古典的な物へ変わり、穏やかな旋律にマーガレットが表情を緩める。そして、会場で展示される様々なチョコレートにも興味津々なようだ。
「色々なチョコがあって、見ているだけでも楽しいですね！　どれか食べてみますか？」
「確かにな。どこから行くか……」
　マーガレットと蒼留人はとりあえず近くにある物から食べてみる事に。最初に目に入ったのは、柚子を使ったオランジェットだった。早速食べてみるとビターチョコとユズの風味が意外なほどよくあい、紅茶と共にいただくとまた風味が華やかになる。そのほか、キンカンやミカンもあり、どれも味わいが変わって興味深かった。
「オレンジとチョコは相性がいいからイメージしやすいな」
「そうですね。……あ、こっちは動物モチーフですよ！」
　マーガレットが見つけたのは、柴犬とか三毛猫など和な動物の顔を象ったもの。
「本当だ。これ、かわいいな」
「ええ。ですから、これは少し食べるのに勇気がいると申しますか……」
　躊躇っていたマーガレットの横で、動物チョコを無造作に齧ってしまう蒼留人。
　マーガレットは思わず「って響さん？！」と声を上げてしまう。一瞬止まる二人。これで何かを悟った蒼留人の背中に冷たい汗が流れる。めちゃくちゃ気まずい。
（これは、ちまちま齧るより一気に……）
　彼はぱくっ、と残りを食べてしまった。因みに柴犬型のチョコには入り大豆が入っていて香ばしい。
「いいな、これ。見た目もかわいいが、味も格別だ」
「なら、よかったです」
「マガレには別のがいいかもしれないな。あ、向こうのも美味そうだ」
　「これとかどうだ？」と蒼留人は独楽や羽子板の形をしたチョコレートウェハースをマーガレットに勧める。これもまた見た目が可愛いが、動物型よりも食べやすかったようだ。

「紫蘇？　紫蘇のチョコって合うんでしょうか？　まぁ、罰ゲームということは無いんでしょう」

　どうぞ、とマーガレットは蒼留人へ紫蘇入りのチョコレートを進めてくる。
「それって梅干しのだよな？　まあ、まずいものが並んでるとも思えないしな」
　彼の脳裏に浮かぶのは、何故か姉の顔。罰ゲーム用の美味しくない食べ物を食べさせられた記憶がよみがえりそうで、どうにか姉の顔を追い払う。
　試しに食べてみると、ほんのり紫蘇特有の香りが。「これは好き嫌いがはっきりしそうだな」と何度も頷いて食べてみる。
「こっちは薄荷で、向こうの真っ黒なのは竹炭……って和もいいが国語力を試されるな」
「薄荷はミントだそうです。チョコミントですね。竹炭は確か無味無臭だった気がするのですが、腸内環境を整るとかいいますし、健康志向的なやつでしょうか？」
　真っ黒い竹炭チョコを見、口にするマーガレット。最初、マーガレットがあまり食べていないような気がした蒼留人だったが、目で楽しみ、食べて楽しむ彼女の姿を見てほっ、としていた。
「さすがに口の中が甘くなってきたな、向こうでお茶でも飲もうか」
「そうですね。あっちで寝子島産のお茶が振る舞われているみたいですし、飲みましょうか」
　蒼留人がそれとなく誘えば、マーガレットも頷く。
　二人は、次はどれを食べようか等楽し気に話しながらお茶を貰いに行くのだった。