waに染まる猪口齢糖と伝統技術の饗宴 in サロネコ1371｜リアクション

waに染まる猪口齢糖と伝統技術の饗宴 in サロネコ1371

＊お誘いの日は和歌とチョコと……

　その日、鴻上彰尋はとてもうきうきしていた。
（『猪口齢糖と伝統技術の饗宴』……いったいどんな感じなのだろう？）
　七夜あおいからお誘いの手紙を貰った時から、こんな感じかもしれない。イベントの内容もそうだが、想いを寄せるあおいからの誘い、というだけでも心が躍る。しかも、彼が好みそうなイベントへのお誘いである。
（あおいさんは、ちゃんと俺を見てくれているみたいだ）
　なんて、よりドキドキしてしまう。
　まぁ、フォンダンショコラの作り方を教えるのもいいなぁ、と思ったが神出鬼没なあおいの弟・ソラの事も考え取りやめに。
「次は、俺の方から誘いたいな」
　そう呟いた時。可愛らしい装いのあおいが待合場所にやってきていた。

　「待った？」「いえ、今来たところです」というようなやり取りの後、二人で仲良く会場へ。今回は、二人ともフォーマルな装いなため、普段よりちょっと大人っぽく見えた。
「どうかな？」
　あおいが秋の空を思わせる青のワンピースを見せ、はにかめば彰尋は「似合うよ」と少し頬を赤くしながら言う。和服の生地を使って作られたワンピースは、とてもあおいに似合っている、と彼は考えた。
　彰尋も、ネクタイピンや小物に和の要素を取り入れていたのでなんとなく嬉しくなる。
　聞こえてくるのは、和楽器を利用したロックミュージックで気分も上がる。
　二人でおしゃべりしながら会場を回っていると、扇や毬を象った最中が見つかる。餡にチョコレートを入れたものらしく、おいしそうだ。
「こっちは和風の柄のチョコレートだね。こっちもかわいい」
　あおいに教えられたチョコレートは、貝の模様だったり、鹿の子模様であったり、波模様だったりとなかなかお洒落である。
「どれも美味しそうだから迷っちゃうね」
　と彰尋が言えば、あおいも同意なのか小さく頷き、自然と笑い合う。そうしていると……、最中の方には『和歌シリーズ』とタイトルがつけられている事に気付く。
「なるほど、和歌をイメージしているんだね」
「それはそれで素敵かも」
　彰尋とあおいはどんな和歌がモチーフなのかと興味深く思い、１つ１つ見ていく。あおいは早速興味深い物を見つけたようだ。
「山の形の抹茶風味……大江山だって！」
「文の形の物と川の流れモチーフのもあるね」
　傍らで彰尋がそういいながら二つの最中を見つめる。脳裏に過ったのは、「今すぐ会いたい」というような女性の歌と、「わかれていても、また逢えるよ」という男性の歌。それぞれの歌人を思い出し、胸を押さえる。だが、あおいの表情を曇らせたくない彼は、自然と柔らかい笑顔で「これ、一種類ずつ食べてみないかい？」と誘った。

　二人で仲良く最中の他幾つか食べた後、野点体験をしようか、と話が弾んだ二人。だが……。
「野点、混んでるみたいだね……」
　あおいは外の野点コーナーを見て呟く。待合スペースも埋まっており、二人が野点体験をするまでもうしばらく時間がかかりそうだ。とりあえず休憩スペースで暫く休むことに。
「ちょっと飲み物を取ってこようかな。あおいさん、ちょっと待ってて」
　彰尋はそう言って席を立った。