魔滅まき決戦、いざ鬼退治！｜リアクション

魔滅まき決戦、いざ鬼退治！

『わしらの里では、もうじき成年の儀があるんじゃが……弟は緊張しぃいうんか……中々うまくいかなくての。今年で三回目なんじゃ』
　ラッセルの質問を受けた鬼たちは、憑きものが落ちたような顔で語り出した。
「成年の儀って、具体的に何をするの？」
『大岩を金棒でたたき割るんじゃ。……けど、岩に鳥が止まってたり、めんこい娘が応援してくれたりすると、うまく力が入らないんじゃぁ……』
　うなだれる青鬼の言葉にふむふむと頷く蒼。
　弟の成年の儀を、是非とも成功させたいと兄は思っていた。
　そんな折、特訓に誘ったら、なぜか寝子島に飛ばされてしまったのだという。
『わしゃ悔しいんじゃあ……里の奴ら、弟をバカにしよって……娘たちだって『モテない』とか……見る目が無いくせにエラそうなんじゃ……』
『あ、兄者ーっ！』
　抱き合って泣く鬼兄弟を見て、紫は考え込んだ。
　寝子島ならば里の目もないし、思う存分特訓できる。噂に聞く人間というのはどんなもんか、という動機で破壊行為に及んでいたようだ。
　人間達は、ちらちらと互いを見やり、こくりと頷いた。

◆

「んー、今のやり方だと、腕だけを使っているから、全身を使ってこう、力の流れを意識するんだ」
『こ、こうか？』
　ビルの上、ラッセルのフォームに合わせて、青鬼が素振りをしている。
「いいフォームだわ。元々力は強いんだし、もう何も心配ないんじゃないかしら」
「鬼さんいいかんじ！」
「あんなに素早く動ける筋肉があるッス、いけるッスよ！」
　智依子、楓、桐子の言葉にこくりと頷く青鬼。
　赤鬼の目線ぴったりの別ビルでは、仙藤姉妹がモテる方法について話ていた。
「私の友達が言ってたよ。『悲しいことがあったとき、話を聞いてくれるだけでいいの』って」
「そうね。『うんうん、辛かったね』と言ってもらえるだけで、癒やされる傷もあるのよね。元気な時ばかりじゃないし」
『そ、そーなんかぁ』
「弟さん、陰で努力するタイプなんじゃない？　だったら、黙って話を聞くのも苦じゃないと思う」
『そーなんじゃ！　ひけらかすのを嫌うタイプなんじゃぁ！　弟に伝えるわ……』
　紫の指摘においおい泣き出した赤鬼を慰めるため、蒼はもう一度ろっこんを使って、キャンディをあげることにした。

◆

　寝子ヶ浜海岸。
『達者でな、寝子島の！』
『世話になった。飴もありがとう』
　アドバイスと飴（蒼のろっこん製）にすっかり満足した鬼の兄弟は、テオの導きで、元の世界へと帰って行った。
「どこの世界でも、大人になるって大変だなぁ」
　とラッセルが言えば。
「どんな人が大人なのか、一言では表せないものね」
　と紫。
「あー、大人になると一晩中ゲーム出来なくなっちゃうんだろうなぁ」
　姉の言葉を受ける蒼は少し寂しそうだ。
「それにしても、強敵だったッスね」
「うん！　でも、きょうてきはそのうちおともだちになってくれるって、園長せんせいが言ってた！」
「ライバルってやつッスね、燃えるッス！」
　盛り上がる楓と桐子の会話に、智依子は思った。

（園長先生って、一体どういう人なのかしら……）

　寝子島の海は穏やかで、波だけが静かに寄せていた。

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あとがき

担当マスター：陣杏里
ファンレターはマスターページから！

皆さまこんにちは、『年の数だけ豆を食べたのはいつまでだったか思い出せない』陣　杏里です。

季節外れの節分は、いかがでしたでしょうか。
秘密の魔滅たちを駆使したＡＣ、楽しく拝見致し、
「かっこいいアクション（活躍）とは……！」と考えつつ執筆致しました。

寝子島での豆まきを楽しんで頂ければ幸いです。
毎日寒いですが、体調管理にはお気をつけ下さいませ。

お読みいただきました方、ご参加いただきました方、どうもありがとうございました。

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