魔滅まき決戦、いざ鬼退治！｜リアクション

魔滅まき決戦、いざ鬼退治！

　いくら武器が優れていても、人間と巨体の鬼では、歩幅の差はいかんともしがたい。
　智依子と楓の親子は、見えはすれども辿り着けずという状況を経て、桐子と青鬼の戦場に到着した。
「ママ、見て、あそこ！」
　親子からほんの１０ｍほど離れた場所で、両者は熾烈な戦いを繰り広げていた。
「食らえッス！　ひっさぁつ、上投げ魔滅シャワー！」
『ぐわっ、おのれこしゃくな！』
「むむっ、そんなに効いてないッスか！？」
　桐子の投げた剛速球は青鬼に直撃したが、痛打とはならなかったようだ。
「ならば走り回って背後をとるッス！」
『させるかっ！』
　妨害しようとした金棒の一撃は当たらなかったが、飛び散った瓦礫が桐子に襲いかかる。
「危ない！」
　智依子は、瓦礫の軌道から桐子をかばい、物陰に隠れる。
「お姉ちゃん、だいじょうぶ？」
「あ、ありがとうッス」
　楓は埃まみれになった桐子にハンカチを差し出す。
「やっぱり大きいわね……弱点とかないのかしら」
「どうも背中が弱いみたいッス。魔滅がぶつかった時に派手に痛がってるッスから」
　楓のハンカチで顔をふきふき、物陰から青鬼を伺う桐子。
「作戦がひつようだと思うの。園長せんせいがいってたもん、大きな目標をこーりゃくするには、作戦をたてましょうって」
「おぉっ！？　何か名案があるッスか？」
　智依子は（豆まきの話だよね？）と不思議に思ったが、娘の作戦に耳を傾けることにした。
「まず、はやーいお姉ちゃんがさいしょに行って、蝶のようにまい、蜂のようにさすの！」
「かっこいい役ッスね！」
「鬼がおこってお姉ちゃんの方をむいたら、楓とママが背中をたくさんこーげきする！」
「なるほど、うちの役目は陽動ッスね。小さい子に走り回らせる訳にはいかないし、ベストな配役だと
思うッス」
　智依子は、ちょっぴり卑怯かな……とも思ったが、現状採りうる最良の作戦だとも思ったので、黙って頷いた。
「青鬼ーッ、待たせたッスね！」
『おぉ、待ちくたびれたぞ、ちんまいの！』
「いざ、尋常に勝負ッス！」
　まず正面から魔滅を投げ、めくらまし。そのスキに梓親子が鬼の背後へと駆ける。
　ビルを蹴って跳び、鬼の頭を踏み台に、後頭部への攻撃。
　ある時は鬼の体を駆け、交通標識の柱でぐるりと大車輪。
　足の小指を攻撃したかと思えば、マンションのベランダ伝いに駆け上がり、顎の下に渾身の上投げ魔滅。
「お姉ちゃんすごーい！」
「ちょ、ちょっと楓！」
　たたっ、と駆け出す娘の後を追い、魔滅鉄砲を構えて発射――命中。
「おにはーそとー！　ふくはーうちー！」
　子供が豆まきしているだけで届くかしら、と思う智依子の目前で、魔滅は燃え上がり、猛烈なスピードで鬼に襲いかかった。

　――その結果。

『ぎゃあああっ！　痛い痛いーっ！』
　悲鳴をあげる青鬼を見て、楓はキャッキャと喜んでいる。そしてまた、魔滅を掴んで投げた。
「おにはーそとー！」
『いたっ、痛いっ！』
　背中を押さえて痛がる様を見て、ぴょんぴょんと飛び跳ねる楓。智依子は一抹の不安を覚えた。

（……変な方向に目覚めなければいいんだけど……例えばＳとか）

　さんざん弱点を攻撃した結果、青鬼は泣きながら逃げていった。
『ちくしょー！　兄者に言いつけてやるからなー！　覚えてろ！』

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