ニャンてったって、ネコがすき｜リアクション

ニャンてったって、ネコがすき

◆３匹の来客

　とある平日。
　青山絢は学校での授業を終えて、まっすぐシーサイドタウンにある自宅に向かっていた。そして到着するとすぐに私服に着替え、のんびりしようとリビングに本を持っていく。
　本を手に取りページをめくり始めると、どこからか猫の鳴き声がした。声の出所を探すと、棚の隅にきらきらぴかぴかしている猫がいた。

「なにこれ……？」

　全身が宝石のように輝いている。
　よくよく見れば猫なのだが、それでも絢の疑念は晴れない。

（こんな猫っていた？）

　寝子島には様々な猫がいる。とはいえ、流石に見覚えは無い。絢が不思議に思っていると、宝石猫がカーペットに自分の体を擦り付けていることに気づいた。

「……もしかして、磨いてほしい？」

　なんとなくそう察した絢は、ハンカチを持ってきて、猫を膝の上にのせて磨いてあげた。宝石猫はとても気持ちよさそうに絢に体を預け、とろんとしている。さらに磨いてあげると、完全に眠ってしまった。
　絢は眠ってしまった猫をそっとソファの上に置くと、何か飲み物を飲もうとキッチンの冷蔵庫に向かった。

「あの猫はなんなんだろう」

　宝石猫のことを考えながら冷蔵庫を開けようと手を伸ばす。しかし、その手がふと止まった。キッチンにトゥルトゥルにとろけている猫がいた。

（今日は変な猫がたくさんいるけど、まあ、人畜無害そうだし……。でもこのとろけている猫、どうしたらいいんだろう？）

　先ほどの猫と違って何か求めている様子もない。観察していたら液体猫は近くに置いてあった空き瓶に嬉しそうに突進して、その中に収まってしまった。みっちり隙間なく入っていて表情はよく分からないが、満足しているようだ。

（なんだかよくわからないけど、この猫がそうしたいのならそうするしかないのかな……）

　なにはともあれ、絢はこの奇妙な猫たちの相手をしながら水谷真優理の帰りを待った。

　　＊　＊　＊

「ただいまー」
「おかえりなさい」

　仕事を終えて帰宅した真優理を迎えたのは、絢と見知らぬ２匹の猫だった。一匹はまるで宝石のようにぴかぴかと輝きを放ち、もう一匹は瓶の中でまったりしている。正直にいえば、猫かどうか半信半疑だった。

「……２匹とも、猫よね？」
「うん、たぶん」

　絢は真優理が帰ってくるまでの出来事を簡単に話した。話を聞く限り、とりあえず害はなさそうだと真優理も感じた。

「この子たち、ちゃんと餌を食べるかしら？」
「どうなんだろう」

　２人とも不安を覚えつつ冷蔵庫から猫が食べそうなものを取り出す。好みの違いはあるようだが、特に問題なく食べているのを見て絢たちは安心した。

「変な猫だけど、よく見たらかわいいわね。この子たち、飼っちゃおうか？」

　そんなことを話していたら、また一匹迷い込んできた。

「今日は色んな猫が来る日みたい」

　真優理はその猫にも餌をあげた。しばらくすると蛍のようにお腹の辺りがぽわっと光り出した。

「あれ？　まるでホタルみたい。この子も他の２匹の仲間なのかしら？」

　その猫はお腹のあたりを触ると温かかった。それから一晩中、絢と真優理は３匹の猫と一緒に過ごした。宝石猫を磨いたり、液体猫のとろける感触を楽しんだり、蛍猫の温かさを感じたり。そうして愛でているうちに、いつのまにか眠ってしまった。

「……ん……朝」

　絢が目をさました時には既に朝だった。部屋を見回すと、３匹の猫はいなくなっていた。寝ている間にどこかへ行ってしまったのだろう。真優理も目を覚まし、部屋の状況に気づくと絢に声をかける。

「また逢えたらいいね」
「そうだね」

　真優理の言葉に絢は静かに答えた。

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