【お三夜】猫と人とあやかしと、三つの世界が交わる夜｜リアクション

【お三夜】猫と人とあやかしと、三つの世界が交わる夜

●SideB：霊界：鳥居の道＜３＞

　こうして皆の奮闘があるとはいえ、子蜘蛛の攻撃は際限がなかった。
　いったいあとどれくらいこの鳥居の道を行かねばならぬのだろう。
　両替屋ポンが教えてくれた道は本当に合っているのだろうか。
　疲れから、不安が蔓延しはじめる。
　そんなとき、フクロウになって偵察に出ていた桜井ラッセルが戻って来た。
「いた！　最奥にでっけえ大蜘蛛が！　まともにぶつかっても勝てる気しねぇ！」
「あとどれくらい？」
　曖浜瑠樹が訊く。
　小学生の彼は、皆に守られながらの行軍だったけれど、それでも疲れてきている。
「もうちょっとだ！　あと二百メートルもねえ！」
　その言葉に希望が湧く。
　道哉が上げた手を振り下ろして号令をかける。
「子蜘蛛はもう相手にするな。みんな、駆け抜けなさい！」
　皆、走り出す。
　だが、子蜘蛛達はなおも行く手を阻んでくる。
「うわあっ」
　瑠樹の眼前に子蜘蛛が飛び出してきた。
　ラッセルはふたたびフクロウになって、瑠樹の顔の前に現れた子蜘蛛に体当たりして弾き飛ばすと、そのまま子蜘蛛達をかく乱するようにちょろちょろと飛び回った。
（俺ができることはこのくらいだ。でもないよりマシだ！　みんな頑張れ！）
「ありがとう、ラッセルさん！」
　ラッセルの攪乱に助けられた瑠樹はお礼を言って、それからラピちゃんを握りしめる。
「オレも、できることをするよぉ」

「子蜘蛛さん……たーくさん和んでほしいなぁ！」

　瑠樹のろっこん＜ゆるゆる和みと恩恵の輪＞は、瑠樹がぬいぐるみなどに和むと周囲の精神を著しく和ませ脱力させる効果がある。しかも進化能力で、特定の相手のみに効果を集中させることもできるのだ。
　子蜘蛛の動きがにぶる。
　もじもじと、その場で手を擦り合わせるような仕草をするものもいる。
　瑠樹の和みが、仲間には効かず、子蜘蛛にだけ効いたようである。
「よかったぁ、上手くいったよぉ。みんな、今のすきに駆け抜けよう！」