音物語｜リアクション

音物語

◆気の合う波長

　ある日の夜。
　楡宮遠海は自室で寛いでいた。するとスマホにメッセージが届いた。相手の名前を見ると『星野アカリ』と表示されていた。中学時代に一緒にバンドを組んでいた子だ。だいぶ久しぶりに連絡を受けた気がする。どんな用件だろうかと思いつつ、遠海は軽く挨拶を返した。

『今度新しくバンドを結成するから、一緒にやらない？』

　続けて送られてきたメッセージは、バンドへの誘いだった。遠海は寝子島高校の軽音部に所属しているが、外で活動するのも悪くないと思ったので二つ返事でOKした。
　それから数日たった日曜日。遠海が待ち合わせの場所に着くと、アカリが先に待っていた。

「久しぶり！」

　しばらく見ないうちにアカリはすっかり大人っぽい子になっていた。

（胸も大きい……）

　遠海はどうしても自分の胸元と見比べてしまう。

「……遠海、聞いてる？」
「え、なに？」

　胸に意識が向いていてアカリの話を聞きそびれたようだ。改めて尋ねると、今日はメインヴォーカルとドラムの子が来るのだが、その２人は少し遅れてくるとのこと。

「どんな子たちなの？」

　そう尋ねるとアカリは楽しそうに答えた。彼女と同じ高校に通っている姉妹で、偶然音楽の話になった時に意気投合。そして『衝動少女』というバンドを結成して活動を始めたらしい。ただ、キーボードをしていた子が辞めて別のバンドに移ってしまった。そこで遠海を誘ったという経緯を簡単に説明した。
　そんな話をしているうちに、姉妹――綾瀬ルイとメイがやってきた。ルイが姉でドラム担当、メイが妹でメインヴォーカルだという。

「はじめまして、楡宮です」

　丁寧な挨拶から始まった顔合わせも数分で和やかになった。話をしてみると遠海と姉妹たちは音楽やファッションの趣味が一緒でお互いに話しやすく気が合った。

（このメンバーでやるバント、楽しそう）

　遠海はそう強く感じ、改めてバントへの参加を表明した。そして早速来週のライブに向けた練習を開始した。