寝子電スタジアム、静かなる危機｜リアクション

寝子電スタジアム、静かなる危機

　時は少し遡る。

　スタジアムで行われていた試合を見ていた修とラッセル。
　接戦の中、ゴールが決まった瞬間は彼らも揃って盛り上がっていたものだ。

　しかし突然の轟音によって試合は中断。安全確認のため、ということでアナウンスが聞こえてきたので観客たちは皆ざわざわとするばかり。
　そんな中で２人が空を見上げれば、黒く濁る何かが空に映り込むのが見えていた。

「あれは……」
「まさか！」

　ラッセルも修も、滴がいることにすぐに気づく。
　だが彼らが動き出すよりも早く、どろでろろ達が散らばってしまうのが見えてしまった。
　急ぎ２人は最上段へと走り、どろでろろ達を討伐するため状況の確認から始める。

　ラッセルは土煙に紛れ、金色の鍵を握りしめて鷲へと変化する。
　空を大きく一回りし、スタジアム全体をよく確認してから再び地上へ戻る。
　鷲の姿になっている間は人で出来ることが１つも出来ないため、修へ連絡を入れた後は再び鷲の姿になってどろでろろ達の居場所を割り出していく。

　支柱を攻撃しているどろでろろ達。人々を一気に潰すために滴に命令されたのだろう、がじがじ、べちべちと攻撃を続けている。
　救いなのは、一瞬で支柱を折るほどの威力ではない、といったところだろうか。鷲の姿となったラッセルは脚でどろでろろ達をひっつかみ、まるでサッカ―ボールを蹴ったかのような勢いで別のどろでろろへと投げつける。

　ゴンッという鈍い音と共にぶつかったどろでろろ達。
　何が起こったのかもわからぬままにそのまま床に伏せ、休眠のような姿を取っていた。

　だが、流石にもう一度動き出されては敵わない。
　そこでラッセルは修に連絡を取り、位置を知らせて彼のろっこん――分解の力でどろでろろ達を消滅させることに。

「それにしても、避難誘導が出来ていないみたいだな」

　修が辺りを見渡せば、スタジアムにいた人々がまだ逃げ遅れている様子が伺える。
　完全にパニックになっているのが２人にも伝わっており、どろでろろの攻撃だけでなく、パニックによる圧死者もでてしまう恐れがある。
　故に誰かが誘導を行えれば、と考えていたところで……修とラッセルは１人の少女が避難誘導をしている姿を見つけた。

　だが少女――想花は周囲を取り囲むどろでろろ達に気づいていない。
　故に２人は、声を上げるよりも先に動き出した。