寝子電スタジアム、静かなる危機｜リアクション

寝子電スタジアム、静かなる危機

　どろでろろ達から逃れようと、スタジアムの人々が逃げ惑う。
　しかし充分な避難誘導が出来ていないのか、逃げ遅れた人の姿もちらほらと見受けられた。

「……っ……」

　思わず唇を噛んだ想花。
　いつものビビリな自分が表に出てきそうなのを必死に堪えて、耐えろ、と言い聞かせるように強く、強く、唇を噛みしめる。
　ここで止まってしまっては、滴を助けることさえままならない。
　少しでいい。どんなに小さな勇気でもいいからと、振り絞って前へと進んだ。

　しばらくすると聞こえてきたのは、がん、がん、という音。
　何処から聞こえてきているのだろうと想花が辺りを見渡した時、どろでろろが２匹ほど支柱を叩いているところを見つけた。
　その真下にはまだ逃げ切れていない人々の姿も見受けられ、このままでは非常に危険だと想花は再び走り出し、大声で人々の避難誘導を開始した。

「落ち着いて！　この通路を抜ければ外へ抜けられますから！」

　心と身体が震える。けれど、声だけはしっかりと人々に届くように大きく上げた。
　少しでもいい。滴が起こした事件を止めるため、自分に出来ることをやるだけなのだと！

　ある程度の人々の避難が済んだが、逃げ遅れた人がまだ見受けられる。
　そんな人々に向けて想花はまた大声を張り出すのだが、流石にもう滴もどろでろろ達も黙ってはいない。
　真っ直ぐに想花へと向けられるどろでろろ達。数匹がかりで彼女を抑え込もうという魂胆なのだろう、四方八方を取り囲まれる。

「しまっ……！」

　気づいたときには目を閉じて、顔を覆うように両腕でガードの構えを取った想花。
　流石にこれは避けられないだろうな、と覚悟を決めていたのだが……何も起こらない。

　目を開いてみれば、彼女は無傷のまま。けれどどろでろろ達はぐったりとした様子で想花の足元に転がっている。
　何が起こったのかと顔を上げてみれば……。

「大丈夫か！？」
「セーフ！　間一髪だったみたいだ！」

　想花の周りを取り囲むどろでろろ達を囲い込むように、八神修と桜井ラッセルが立っていた。

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