寝子電スタジアム、静かなる危機｜リアクション

寝子電スタジアム、静かなる危機

　ラッセルは空から避難者がいないか、どろでろろが隠れていないかの捜索を。
　想花は地上から避難者がいないか、滴がいないかの捜索を。
　二手に分かれる事で避難者達の位置をより早く割り出すことに成功しており、それを聞いた修と道哉が順繰りに救出していく。

「っと、まだ生きた個体が……！」

　スタジアムの上段の支柱にしがみつき、どろでろろが２匹ほど壊そうとしている。
　それを見つけた修は精神を集中させ、近くの長板状の席を地面から切り離すように分解して支柱のどろでろろ達へ一撃。
　バットの要領で横へ振って、支柱から大きく遠ざけて地面へ叩き落とせば、どろでろろ達の身体は多大なダメージを受けて身動き一つすら取れなくなる。

　これで殆どのどろでろろ達を倒し終わったはず。
　そう思った矢先のことだった。

「！　あれは……」

　大地に落ちたどろでろろ達に近づく少女――滴。
　彼女は怪我を負ったどろでろろ達にそっと手をかざすと、ずるり、ずるりと何かを注ぎ込む。
　するとみるみるうちにどろでろろ達の身体の震えが止まり、元のとおりに戻り、再び支柱へと飛びつく様子が伺えた。

「あの嬢ちゃんが原因か。回復させるとは、恐れ入ったね……」

　道哉は額に流れた汗を少しだけ拭う。
　回復されるとなったら、このまま攻防を続けるのはジリ貧だ。
　ラッセルも、修も、想花も、皆相応に消費してしまっており、道哉から見れば弱点となりうる部分が光となって見えてしまっている。
　これ以上戦うとなれば危険だ。
　全員の避難は済んでいる。このまま、退避するのも手だが……。

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