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少しくすんだ空の色。
曇り空の多いロンドンの空とも呼ばれる青い色は、どことなく思い人の瞳と似ている気がした。
だからこの
ピアス
を彼が選んでくれたとき、
稲積 柚春
は心底驚いた。半年遅れでも、彼が島特有の変な影響を受けず誕生日プレゼントを贈ってくれたことが嬉しかったのに、その真っ当な意識の中で選んだのがこれ。
(ウォルターさんは、あんまり自分の色を気にしないのかな?)
そうは思っても、この色を身に纏ってもいいと言われたことに期待するなというほうが難しい。
ガラス蓋のついたアクセサリーケースにしまってあったピアスは、こうして眺めているだけでも幸せだった。
今はまだ、片想いの許可を貰っただけの一方通行。……それでも普通の生徒とは違う距離感でいることを許されているとは思うけれど、子供で生徒な境界線を飛び越えたわけでもない。
(……大人っぽく見えるかな?)
シールタイプでもマグネットタイプでもなく、これは耳に穴を開けてつける正真正銘のピアス。それを似合うと言った
ウォルター・B
は、知らなかったのだろうか。そっと鏡を見て触れた耳たぶは、傷1つない。
柚春はまだ、ピアス穴を開けてはいないのだ。
(大人になるまで待てって意味だったらどうしよう?)
このピアスを身につけるのも、関係をどうにかしたいと思うのも。全ては『大人になったらね』と言い含め、ずるい微笑みと共に手渡されていたのなら、そうだったかもしれない。
だけどこれを贈ってくれたとき。散歩の途中で見つけた露店で、たまたま彼の目に留まっただけではあるが、数ある中から選んだときの顔は、そんな顔はしていなかったように思う。
「そうだったとしても……」
このピアスを着けるのに、どういった準備が必要か調べた。教室ではホッチキスのようにバチンと勢い良く穴を開ける道具だったり、安全ピンで豪快に行く者までいたので、どうなることかと心配もあったが、なんとか道具も揃えることができた。
その調べ物の副産物として、右にだけ着けようと思える逸話も知った柚春は、ピアスを耳に当ててみる。
(ワットがすきって言うだけなら)
揺れ物があるし、学校でつけるには目立つかもしれない。それでも自由な校風である学び舎は、ピアスを着けている先輩方も多数いる。校則違反ではないと思うし、それなら尚更ウォルターが待てと添えて渡しただろう。
彼は風紀委員の担当も務めているのだ、殊更他の教職員より規則に厳しいところがあってもおかしくはない。
消毒液を浸したコットンを右の耳たぶにあてる。長期間着けないと塞がることもあるらしいが、一度穴を開ければすぐに取り返しが付くようなものでもない。穴が安定するにも少なくとも半月はかかるし、ファーストピアスには素材も慎重に検討した方がいいのも解っているけれど。
ニードルを持つ手に迷いはなかった。誰かに手伝いをお願いしたり、それこそ皮膚科に赴いた方が安全なのだろうけど、これは単なるお洒落じゃない。
「…………っ!」
鋭い切っ先が己を貫く感触がする。じわりと広がる痛みに手を止めることなくニードルと共にピアスを通しきって、ほんの数秒だけ異物感に顔を歪めた。
詰まっていた息を吐いて、鏡を見る。月型の銀細工に浮かぶ青は、晴れた日の下で見せる笑顔のように明るくて。揺れる細長い蒼が、暗く憂いを浮かべているときのようで。
彼は「そんなに良いものじゃないよ」と笑っていたけれど、気にかけていたロンドンブルートパーズによく似た輝きをする石。
(ワットの、いろ)
彼の瞳色をした石を飾るためなら、痛みなんてあってないような物だ。
初めてこの身を貫いた、じんと存在を主張する感覚は彼が与えてくれたモノ。傷つけたのではない、彼色の石を飾って『好きな異性がいる』という言葉を違えないという誓いと証だ。
「だいすきだよ」
鏡越しにピアスへ微笑めば、彼が笑うように煌めき返す。
たったそれだけのことが、柚春にはとても幸せなことのように感じた。
一番に見て欲しくなって、柚春はマーガレットが表紙に描かれた
レシピノート
を携えて、ブラックウッド邸を訪れた。
もう何度目かになる来訪に
メアリ・エヴァンズ
は快く迎え入れて、柚春の耳元を飾るピアスに気付く。それは以前、柚春のハーフバースデーの際、嬉しそうに見せてくれたものと相違ないだろう。
だとすれば、いの一番に褒めてみせるのはメアリの役割ではない。微笑むだけに留めて、ウォルターを呼んできましょうと客間へ案内しようとした。
「あの、それも嬉しいんですが……実は、メアリさんに質問があって」
部屋に行くまでの途中、柚春は食文化の違いを尋ねた。
レシピに載っているメニューは、どれも副菜にしてはボリュームがあるし、主菜としてパンやパスタを選ぶにもウォルターが普段からどれくらい食べるのかわからない。
「日本だと一汁三菜なんていうけれど、何品くらい作る物なんですか?」
客間の扉を開こうとしたメアリは、その手を止める。これほど興味を示してくれた柚春を案内するべきは、ここではないと思ったのだろう。
「丁度良い物があるかはわかりませんが……こちらへどうぞ」
次にメアリが案内したのは書庫だった。前の屋敷の持ち主であるウォルターの祖母が、イギリスへ嫁ぐ際に色々と学んだ時の本が残されてある。
それは2カ国語で記されているため、ウォルターの側仕えとして日本へやってきたメアリが、日本のことを学ぶ際にも役立った本たちだ。
「僕が読んでも?」
「はい。こちらの書庫にある本は、ウォルターさまから管理も任されておりますので」
代々受け継がれてきたような本に、少し緊張する。柚春は読めないタイトルはメアリに助けを貰いつつ、なんとか自分でも読めそうなイギリス文化について学べる本を数冊手に取った。
「ありがとうございます! 素敵な読書の秋になりそうです」
「読書の……ああ。日本では風流な四季の過ごし方があるのでしたね」
「はい。いつかメアリさんが好きな本とか、ウォルターさんに読み聞かせしていた本なんかも読んでみたいな」
日本に住んで長いからと、彼がいつまでも母国を離れているとも限らない。彼の通ってきた道に、辛いことがあったとしても……共有できる幸せは一緒に笑いたい。
まだ2人の思い出の品をスラスラ読み解けるほどの語学力はないだろうけれど、いつかは。
(英語、頑張ろう!)
それからメアリが児童文学を好むことや、ウォルターも小さい頃は怖がりな所があったことなど話を弾ませて客間に戻ると、暫くしてウォルターが顔を出した。
「すぐに声をかけてくれて良かったのに」
「お、お仕事かなって思ったから……!」
嘘ではない。でも、ちょっとだけ嘘だ。
会いたいけれど恥ずかしい。覚悟を決めたあとのほうが、よっぽど緊張する。
来るべき日にどんな言葉で想いを告げるか――最近はそんなことばかりを考えていたせいかもしれない。
「ふぅん? ……それにしても、なんか今日」
ピアスに気付いたのか、ウォルターはじっとこちらを見ている。だけどその視線は一旦つま先へ行って、また戻ってきて。前髪を微妙に切ったかと目を細めては、メイクでもしているかと顔を寄せて覗き込む。
「そん、なに、近づかなくても……わかるでしょ!」
「――似合うよ」
ふいに右耳に落とされた、間延びしない口調。
それはいつか聞いた、暑い夏の日のようにクラクラさせる真面目な声音。
真っ赤になって心音が外に聞こえそうに高鳴るのと、ウォルターが一歩離れるのとは同時だった。
「さっすが僕の見立てだねぇ」
すぐにいつもの調子に戻ってしまったから、揶揄われているのだと思うけど。距離を取られたことに寂しさはあるけれど。……それでも、やっぱり嬉しい。
「ねぇ、ウォルターさん」
「ん?」
気付いただろうか。左耳にはピアスをしていないことを、穴すらないことを。
この右耳のピアスだって、そう。あなたのために、あなたが好きだと宣誓するように身につけた。
……あなたが贈ってくれた、あなたの色を纏っているのが見えるだろうか。
「すき」
はにかむように笑った柚春を、ウォルターは静かに瞬き返す。
だいすきなロンドンブルートパーズに似た瞳が、僅かに丸くなった気がした。
「この色は、とってもすき」
右の耳たぶに触れ、真っ直ぐに見つめる。この上ない幸せを伝えるように、潜めた想いを解き放つように。
譫言のように繰り返す『すき』の甘さに、今さら……何も知らぬと言えるほどウォルターも愚鈍でもない。茶化すように流してしまって良いものでもないのもわかっていた。
「柚春」
「僕も知りたいな、ワットのすきなもの!」
困惑させしまった空気を詫びるように、柚春は場の流れを変える。
さっきメアリに好きな本を聞いたのだとか、ウォルターの部屋も本がたくさんあったけど、書庫も別であるなんて驚いたとか。気まずくさせないようにはしゃぐ柚春の半分は照れ隠しだ。
(ねぇワット……しってる?)
右耳のピアスに込められたのは『好きな異性がいます』という主張。
その相手に、告げたい言葉を決めた。
どうか、言葉を遮らないで。
あなたに告げるその日は――揶揄わないで真面目に聞いてほしい。
僕は、覚悟を決めたんだ。
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担当ゲームマスター
浅野 悠希
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
恋愛
NPC交流
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2023年01月10日
参加申し込みの期限
2023年01月17日 11時00分
アクション投稿の期限
2023年01月17日 11時00分
参加キャラクター一覧
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