更衣室の落とし物｜リアクション

更衣室の落とし物

●パンツ泥棒は突然に

「ん？　浅井先生どうかしたのか？」
　着替えを終えて教室に戻ろうとしていた邪衣士は、異変に気づき一部始終を眺めていた。
「浅井先生も災難だな……てかなんで女物のパンツ持ってるんだあの人？　とりあえず何があったのかを聞いてみるか」
　肩を落として出てきた浅井幸太に、士は声をかけた。
「何があったんですか？」
「いや……男子更衣室に女子の下着があったんだ。ただ、それだけのはずなんだが……」
「なんか誤解されてるみたいですけど。先生、こういう時はとりあえず熊先生に報告したほうが……」
「クマ……？」
　浅井先生の視線が自分の頭上に向いたことに気づき、士は言う。
「いやクマって俺じゃなくてですね……う～ん、そもそも発見してすぐに高野先生に相談しておけばこんな事にはならなかったのでは？」
「そうだな……そうするつもりだったんだが、なんて切り出していいか迷ってな」
「そういえば先生って女性が苦手でしたよね」
　そうこうしているうちに、その場にいたり話を聞いたりした生徒たちがねこったーに書き込みし、噂はあっと言う間に広がっていった。

　キュピーン！
　ねこったーを見た桃原空音は閃いた。
「浅井せんせーは可愛いパンツを履きたいけど、恥ずかしがり屋さんだから言えなかったんだね！」
　浅井先生を追いかけて陸上部マネージャーになるぐらい激萌スティック（略）きゅんきゅんドリームな空音。
「浅井せんせーの為なら張り切っちゃうのだ！　浅井せんせー！　ズボン脱いで待っててくださいね！」
　ロッカーへ向かうと、カバンからパンツを取りだした。
「あたしの資料用のパンツコレクションと……。あ、確か士くんはアルパカ柄の可愛いパンツを持ってたような……」

　浅井と別れて教室へ向かう士は、背筋に悪寒を感じていた。
「ちょいと風邪気味で泳いだから少し体調が悪いな……なんか背後からいやな予感が、くわばらくわばら。
　……ってぬわぁあ！？　桃原！？」
　本調子のときならかわせたはずの奇襲だったが。
　浅井先生を思う乙女心は、空音に普段以上のスピードを与えていたのかもしれない。
「見つけた！　うおおお！　パンツよこせェェ！　ズボンごとずり下げておぱんつゲットなのだ☆」
「ぬあああっ！？　か、返せ！」
　あまりのことに硬直し慌ててズボンを上げているうちに空音は逃げ去った。
　目撃者がいなかったのがせめてもの幸いだった。
「くそっ、余計に風邪がひどくなりそうだ……待て！」
　

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