寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！｜リアクション

寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！

　紅ちゃんとハロウィンデートだー！
　なんて言ったら芋煮紅美はどんな顔をするだろうか。白真白は想像してみる。
　彼女は『いやいやいやそれはないっ』と赤くなって手を振るかもしれない。
　でも案外『いんじゃね？』と笑ってくれるかもしれない。
　どっちにせよ紅ちゃんらしいよね。
　ともかくデートという言葉は使わぬまま、真白は紅美を迎えたのである。
「ちーす」
　やってきた紅美は別段普段と変わることがない。おなじみスカジャンにおなじみリボン、ポケットに両手をつっこんでやってきたところも同じだ。

「紅ちゃん仮装しないんだ？」
「してるしてる何言ってんの真白、変えてんじゃん」
　ほんとだと真白は気づいた。頭のリボンは赤ではなく青だし、スカジャンのベースカラーも青だ。胸や背中の刺繍まで青系統でまとめているではないか。いずれも単体では着ていたことはあったと思うが、青で統一してきたのは初だと思う。
「２Ｐキャラ」
　しししと歯を見せて笑う紅美である。またの名をカラバリ（color variation）、格闘ゲームで同キャラクター対決になったとき出てくる色ちがい版というわけだ。
「２Ｐキャラて！」
　ノーマルバージョン（？）の紅ちゃんのこと知らない人には通じないよー、と真白は至極まっとうな指摘をした。
「いーのいーの、真白がわかってくれればそれで十分。てか思いつかんかったし」
「私むけ専用コスってこと？」
「だよ」
　紅美はあっけらかんと言うのだが、真白はなんとなくくすぐったい気持ちになる。
「それより真白だよ、むっちゃすげーじゃん！」
「そうかな」
「そーだよ。超可愛い、超カワだよ超カワ！」

「そ……そう？」
「いいなーカワイーなー、ちょっとさわっていい？　ちょっとだけ」
　真白は頬を染めた。ここまで激賞されると照れざるをえない。不思議の国のアリス風、紫を配したエプロンドレスだ。ふんだんなフリルとリボン、黒＆紫ボーダーのニーソックス、紫と白の手袋と手首の赤いリボン、エナメルのシューズにいたるまで遊び心でいっぱいだ。
「なんかいい匂いもするしー」
　などと目を輝かせ顔を近づけてくる紅美は元気そうではあった。でも念のため真白は尋ねる。
「紅ちゃん、疲れたりしてない？」
「え？　健康だよ」
　と返事する紅美は２Ｐカラーかもしれないが、少なくとも『いつもの』彼女に見えた。
「いやさ今回いきなり誘っちゃったからさ、ごめんねー。面白そうだったから参加しようって思ったんだけど、ひとりで参加するのはどうもねぇ」
「なんだそんなこと気にしてんの？　へーきだよ。親も、真白と行くっつったら喜んで送り出してくれたし」
「よかった。じゃ、行こうよ」
　言いながらも真白は心に決めていた。無理をさせる気はない。もし紅美に疲れたり、嫌そうな兆候が出たらすぐに切り上げよう。
　彼女の心は脆（もろ）いのだから。