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寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！
「スタンプラリー……いいよねえ」
今年、恵御納 夏朝はハロウィン☆デイズの企画スタンプラリー参加にあたり、スタンプ押印数百個達成を目標にかかげた。
もともと寝子島住民はイベント好きだ。しかもその傾向は年々強まっている。今年、寝子島ハロウィン☆デイズ！ のスタンプラリー協賛店は例年にまして多く、シーサイドタウンやキャットロード周辺はもちろん、港方面、星ヶ丘や旧市街、はたまた九夜山のお土産屋にいたる津々浦々にまで増えていた。
今年は特に多いということもあり、スタンプラリーの景品もスケールアップしていた。スタンプを十個集めればサンマさんシール、三十個でマンボウくんアクリルプレート、五十個でサンマさん＆マンボウくんマグカップ、七十五個で特別仕様（色がブルーで保温機能つき）のマグカップと映画館無料鑑賞券、そして百店舗超でここまでの全アイテムプラス『秘密のアイテム』がもらえるという大盤振る舞いなのであった。
といっても小さい店は意外と見つけにくいし、スタンプ設置場所には店ではなく見落としてしまいそうな小さな神社や船着き場、ロープウェイ乗り場もあったりして、しらみつぶしというのは困難中の困難だった。たいていの人はスタンプ十個、根性があっても五十個程度であきらめてしまうのが常である。なにせ星ヶ丘マリーナやら九夜山展望台までスタンプポイントに設定されているのだ。土地勘がなければまず不可能だし、あっても一日仕事ではすまない。
しかし夏朝は順調にスタンプを集めていた。時間をかければ不可能ではないとふんだのだ。なので日をまたぐと決め、昨日から地道に挑戦している。
昨日は赤ずきんのコスプレで元気に店をめぐった。古書喫茶やインドカレー店も訪れたし、まずいジュースで有名な自動販売機裏に用意されたスタンプ台も発見した。キャットロードにある『プロムナード』というキャバクラまで、臆さずくぐって入り口でスタンプをもらったのだ。長く暮らし知悉しているはずの寝子島なのに、こうしてめぐればまだ知らぬ店まだ知らぬ場所、あるいはまだ知らぬスポットがあらわれるのが面白い。
「スタンプラリー……たしかにいいかもね」
応じるのは恵御納 夏夜だ。ハロウィンのスタンプラリーは寝子島めぐりの旅でもある。
なお夏夜は昨日、簡単ながら狼のかぶりものをして夏朝にあわせた。夏夜にとっては、夏朝から分離・独立してからの初ハロウィンなのである。もちろん夏朝と記憶を共有しているのでこれまでのハロウィンも楽しい記憶として心に残してはいるが、夏朝の目を通して体感するのと比べれば、直接自分の互換で体感するのとは格別だった。たとえるなら旅行雑誌のページをめくるのと、実際に旅行に出る差といえようか。夏朝にくらべればクールな様子だったが、内心盛り上がっているのはまちがいなまった。
二日目となる本日、夏朝は仮装を変えている。今日は明るい色調の道化師装、権力者のそばにあって権力者を笑い、ときとして鋭い批判を呈する者だ。絶対王政の時代にあっては重要な監視者であり民衆の代弁者であったともいう。といっても衣装は軽妙でしゃれている。頭の鈴が澄んだ音色をたてていた。
一方で夏夜の服装は仮面の紳士あるいは怪盗、夏朝が昼のイメージなら、こちらは夜ということになろうか。やはり王や女王のように権力そのものなのではなく、権力を翻弄する側ということか。ダークブルーを基調とした配色は、夏朝とはコインの両面だった。しかし本質は同一だ。
夏朝と夏夜のふたりは手をつなぎ、今日は旧市街方面を中心にまわっていた。
シーサイドタウンのチェックポイントはもちろん大量だが、旧市街にも多い。なおスタンプ押印について商品購入は必須ではなかった。といっても予算には限りがあるためすべての店とはいかずとも、リーズナブルな店舗ではできるだけ物品を購入してから押印するようこころがけていた。
「星ヶ丘でもお手頃価格のお店って案外あるんだね」
「被服店でもチャームなんかがあったりするから、やはり直接見てみるのは大事かな」
とはいえ寝子島の店舗は魅力一杯なので、ついつい買いすぎてしまう。ハロウィン特別アイテムもあったりするのだから見逃せなかった。
駄菓子屋さんでぺたり！ 文具店でもぺたり！ 八百屋も魚屋も、なぜだかリフォームショップでもスタンプをぺたり！
押せば押すほど夏朝と夏夜の士気はさかんになる。
「やった！ また猫のスタンプだ、嬉しいなぁ」
驚いたことにすべての店舗でスタンプの絵柄がちがっていた。しかもそのほとんどに猫がからめてあった。猫の大きな顔のものあり、横切っていく猫の姿あり、たんなる足跡なんてものもあった。総勢百種を超える絵柄はすべて、島在住の段ボール芸術家なる奇特な人がデザインして作ったという。
「そうだね。これなんかカボチャにのっかる猫だ。ハロウィンらしくていいね。夏朝にはいいと思うよ」
遊ぶひな鳥を遠巻きに見守る母取りのようなまなざしで夏夜は言うのだが、
「え？ 夏夜ちゃんは？」
と夏朝に問われていささか照れくさげに、
「そりゃあ」数秒の間をおいて言うのである。「僕も嬉しいけど」
もちろん猫スタンプは嬉しい。猫スタンプを見て喜ぶ夏朝を見るのも嬉しい。
でもなんといっても、と夏夜は思う。
夏朝と一緒にスタンプラリーをまわれることが何よりも嬉しい。
今年、恵御納 夏朝はハロウィン☆デイズの企画スタンプラリー参加にあたり、スタンプ押印数百個達成を目標にかかげた。
もともと寝子島住民はイベント好きだ。しかもその傾向は年々強まっている。今年、寝子島ハロウィン☆デイズ！ のスタンプラリー協賛店は例年にまして多く、シーサイドタウンやキャットロード周辺はもちろん、港方面、星ヶ丘や旧市街、はたまた九夜山のお土産屋にいたる津々浦々にまで増えていた。
今年は特に多いということもあり、スタンプラリーの景品もスケールアップしていた。スタンプを十個集めればサンマさんシール、三十個でマンボウくんアクリルプレート、五十個でサンマさん＆マンボウくんマグカップ、七十五個で特別仕様（色がブルーで保温機能つき）のマグカップと映画館無料鑑賞券、そして百店舗超でここまでの全アイテムプラス『秘密のアイテム』がもらえるという大盤振る舞いなのであった。
といっても小さい店は意外と見つけにくいし、スタンプ設置場所には店ではなく見落としてしまいそうな小さな神社や船着き場、ロープウェイ乗り場もあったりして、しらみつぶしというのは困難中の困難だった。たいていの人はスタンプ十個、根性があっても五十個程度であきらめてしまうのが常である。なにせ星ヶ丘マリーナやら九夜山展望台までスタンプポイントに設定されているのだ。土地勘がなければまず不可能だし、あっても一日仕事ではすまない。
しかし夏朝は順調にスタンプを集めていた。時間をかければ不可能ではないとふんだのだ。なので日をまたぐと決め、昨日から地道に挑戦している。
昨日は赤ずきんのコスプレで元気に店をめぐった。古書喫茶やインドカレー店も訪れたし、まずいジュースで有名な自動販売機裏に用意されたスタンプ台も発見した。キャットロードにある『プロムナード』というキャバクラまで、臆さずくぐって入り口でスタンプをもらったのだ。長く暮らし知悉しているはずの寝子島なのに、こうしてめぐればまだ知らぬ店まだ知らぬ場所、あるいはまだ知らぬスポットがあらわれるのが面白い。
「スタンプラリー……たしかにいいかもね」
応じるのは恵御納 夏夜だ。ハロウィンのスタンプラリーは寝子島めぐりの旅でもある。
なお夏夜は昨日、簡単ながら狼のかぶりものをして夏朝にあわせた。夏夜にとっては、夏朝から分離・独立してからの初ハロウィンなのである。もちろん夏朝と記憶を共有しているのでこれまでのハロウィンも楽しい記憶として心に残してはいるが、夏朝の目を通して体感するのと比べれば、直接自分の互換で体感するのとは格別だった。たとえるなら旅行雑誌のページをめくるのと、実際に旅行に出る差といえようか。夏朝にくらべればクールな様子だったが、内心盛り上がっているのはまちがいなまった。
二日目となる本日、夏朝は仮装を変えている。今日は明るい色調の道化師装、権力者のそばにあって権力者を笑い、ときとして鋭い批判を呈する者だ。絶対王政の時代にあっては重要な監視者であり民衆の代弁者であったともいう。といっても衣装は軽妙でしゃれている。頭の鈴が澄んだ音色をたてていた。
一方で夏夜の服装は仮面の紳士あるいは怪盗、夏朝が昼のイメージなら、こちらは夜ということになろうか。やはり王や女王のように権力そのものなのではなく、権力を翻弄する側ということか。ダークブルーを基調とした配色は、夏朝とはコインの両面だった。しかし本質は同一だ。
夏朝と夏夜のふたりは手をつなぎ、今日は旧市街方面を中心にまわっていた。
シーサイドタウンのチェックポイントはもちろん大量だが、旧市街にも多い。なおスタンプ押印について商品購入は必須ではなかった。といっても予算には限りがあるためすべての店とはいかずとも、リーズナブルな店舗ではできるだけ物品を購入してから押印するようこころがけていた。
「星ヶ丘でもお手頃価格のお店って案外あるんだね」
「被服店でもチャームなんかがあったりするから、やはり直接見てみるのは大事かな」
とはいえ寝子島の店舗は魅力一杯なので、ついつい買いすぎてしまう。ハロウィン特別アイテムもあったりするのだから見逃せなかった。
駄菓子屋さんでぺたり！ 文具店でもぺたり！ 八百屋も魚屋も、なぜだかリフォームショップでもスタンプをぺたり！
押せば押すほど夏朝と夏夜の士気はさかんになる。
「やった！ また猫のスタンプだ、嬉しいなぁ」
驚いたことにすべての店舗でスタンプの絵柄がちがっていた。しかもそのほとんどに猫がからめてあった。猫の大きな顔のものあり、横切っていく猫の姿あり、たんなる足跡なんてものもあった。総勢百種を超える絵柄はすべて、島在住の段ボール芸術家なる奇特な人がデザインして作ったという。
「そうだね。これなんかカボチャにのっかる猫だ。ハロウィンらしくていいね。夏朝にはいいと思うよ」
遊ぶひな鳥を遠巻きに見守る母取りのようなまなざしで夏夜は言うのだが、
「え？ 夏夜ちゃんは？」
と夏朝に問われていささか照れくさげに、
「そりゃあ」数秒の間をおいて言うのである。「僕も嬉しいけど」
もちろん猫スタンプは嬉しい。猫スタンプを見て喜ぶ夏朝を見るのも嬉しい。
でもなんといっても、と夏夜は思う。
夏朝と一緒にスタンプラリーをまわれることが何よりも嬉しい。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月22日 11時00分
