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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
寝子暦1371年のハッピー・ハッピー・ハロウィン☆デイズ！
自分を変えたいとか社会貢献とか、そんなご大層な名目で決めたのではない。
せっかく寝子島にいるのだから、くらいの軽い気持ちだ。
寝子島の皆が楽しんでいるイベントの雰囲気を一緒に味わいたかった。ただの見物人でもなく参加者でもなく、しいていえばその中間くらいで。
両足を開き気味にして立つ。立っているだけで迫力がある。狼の群れのリーダーに似た、鋭い三白眼で駅を視（み）る。怒っているのではない。もとからこういう眼をしているのだ。けれど真剣な口元なのは、来るべきものを前にして軽く緊張しているからでもあった。
京極 花音はボランティアスタッフとして、寝子島ハロウィン☆デイズのフィナーレを飾るイベントに協力している。託された役目は交通整理、シーサイドタウンのど真ん中、駅前特設ステージそばで誘導棒を振るのだ。誘導棒というのは、よく工事現場や駐車場で警備員が持っているあれだ。早く振るとオレンジの輝きを発し、光の残像をその場に残す。宇宙の騎士みたいでちょっとかっこいい。
今日の花音に日ごろとちがうことがあるとすれば、誘導棒のほかは蛍光グリーンの腕章ひとつだろう。腕章には『スタッフ』と太ゴシック文字が躍り、おなじみサンマさんのイラストが添えられている。
それだけだ。本当にそれだけ。さすが寝子島、ボランティアスタッフも仮装推奨なので、花音の前方十五メートルの位置にいるスタッフは忍者装束に身を包み、そのさらに先十五メートルではバニーガールが、やはり腕章に誘導棒を装備しているというのに。
スタッフに限った話ではない。島民も島外の観光客も、花音の視界に入る姿のほとんどはなんらかの仮装をしているのである。
私服の俺だけ浮いて見えるな。
それはいい。仮装をしてくるべきだったとも特に思わない。自分に似合うコスプレなどとんと想像もつかなかったからだ。でも花音は仮装を見るのは嫌いではないし、見事な扮装には心の中で賞賛も送った。のきなみ楽しそうにしている仮装者を見ているのはこっちも嬉しい。
しかし、いささか後悔していることもあった。
お化けや幽霊、妖怪のたぐいまでこんなにリアルだったとは！
夜のパレードならともかく、仮装コンテストなら日中だから大丈夫だろう――そんな花音の予測は、真っ赤な完熟イチゴよりも甘かった。
真昼の悪夢か阿鼻叫喚、次から次へと恐怖が訪れたのである。
うめき声をあげながら、ゾンビが赤黒い血糊をしたたらせてやってくる。
お岩さんというやつだろう、片目が腫れ上がった女の幽霊が「うらめしや」とつぶやきつつひたひたと歩いてきた。
かと思えばリアルすぎる一つ目小僧が飛び出して、提灯お化けを手にケケケと笑った。
どういう原理なのか首のない西洋甲冑が、その首が入った兜を抱えてガッシャガッシャ駆けてくるではないか。
クトゥルフだかク・リトル・リトルだか知らないが暗黒神話の怪物を模した不定形怪物までべちゃべちゃ這い寄ってくるにいたっては、花音はもう泣きそうだった。
ハロウィンはホラーの季節でもある。ちょっとしたホラーエッセンスをふりかけたコスプレなら当たり前のレベルで、怖い系の仮装には気合いが入りまくっているものが少なくなかった。古今東西ジャンルバラバラ、有象無象の怪奇コスプレがヌッとあらわれるたび、花音は飛び上がっては後ずさってしまうのだ。そのたび「うわあ！」「ひゃあ！」「ぎゃああ！」と声まで出してしまうので、ホラー仮装の人たちは、わざわざオーバーリアクションをとってくれているのだと思って喜んでいる。だがもちろん、花音はサービスでやっているのではない！
このままじゃ心臓がもたねえ。
冷や汗をぬぐい、花音は胸を押さえた。
もちろんホラーテイストの仮装すべてがダメということはなかった。さっき目の前をよぎった吸血鬼（？）らしき女性ふたり連れくらいならいいのだ。ゴシックというのか上品で、ちょっと怖いが魅力的だった。どうせならああいう雰囲気にしてほしい。
また来るな。
花音の正面がシーサイドタウン駅だ。電車が止まるたび大量の仮装者が吐き出されてくる。ちょうどまた、仮装者で満載の電車がホームに入ったところだ。
とにかく不意打ちがよくない。
奥歯をかみしめ身を強張らせ、花音は来るべきものを待ち構えた。
この直後、
「ぎゃあ魚の怪物っ！？」
「待って待ってボクですマンボウです～」
といったやりとりがあったとかなかったとか。
せっかく寝子島にいるのだから、くらいの軽い気持ちだ。
寝子島の皆が楽しんでいるイベントの雰囲気を一緒に味わいたかった。ただの見物人でもなく参加者でもなく、しいていえばその中間くらいで。
両足を開き気味にして立つ。立っているだけで迫力がある。狼の群れのリーダーに似た、鋭い三白眼で駅を視（み）る。怒っているのではない。もとからこういう眼をしているのだ。けれど真剣な口元なのは、来るべきものを前にして軽く緊張しているからでもあった。
京極 花音はボランティアスタッフとして、寝子島ハロウィン☆デイズのフィナーレを飾るイベントに協力している。託された役目は交通整理、シーサイドタウンのど真ん中、駅前特設ステージそばで誘導棒を振るのだ。誘導棒というのは、よく工事現場や駐車場で警備員が持っているあれだ。早く振るとオレンジの輝きを発し、光の残像をその場に残す。宇宙の騎士みたいでちょっとかっこいい。
今日の花音に日ごろとちがうことがあるとすれば、誘導棒のほかは蛍光グリーンの腕章ひとつだろう。腕章には『スタッフ』と太ゴシック文字が躍り、おなじみサンマさんのイラストが添えられている。
それだけだ。本当にそれだけ。さすが寝子島、ボランティアスタッフも仮装推奨なので、花音の前方十五メートルの位置にいるスタッフは忍者装束に身を包み、そのさらに先十五メートルではバニーガールが、やはり腕章に誘導棒を装備しているというのに。
スタッフに限った話ではない。島民も島外の観光客も、花音の視界に入る姿のほとんどはなんらかの仮装をしているのである。
私服の俺だけ浮いて見えるな。
それはいい。仮装をしてくるべきだったとも特に思わない。自分に似合うコスプレなどとんと想像もつかなかったからだ。でも花音は仮装を見るのは嫌いではないし、見事な扮装には心の中で賞賛も送った。のきなみ楽しそうにしている仮装者を見ているのはこっちも嬉しい。
しかし、いささか後悔していることもあった。
お化けや幽霊、妖怪のたぐいまでこんなにリアルだったとは！
夜のパレードならともかく、仮装コンテストなら日中だから大丈夫だろう――そんな花音の予測は、真っ赤な完熟イチゴよりも甘かった。
真昼の悪夢か阿鼻叫喚、次から次へと恐怖が訪れたのである。
うめき声をあげながら、ゾンビが赤黒い血糊をしたたらせてやってくる。
お岩さんというやつだろう、片目が腫れ上がった女の幽霊が「うらめしや」とつぶやきつつひたひたと歩いてきた。
かと思えばリアルすぎる一つ目小僧が飛び出して、提灯お化けを手にケケケと笑った。
どういう原理なのか首のない西洋甲冑が、その首が入った兜を抱えてガッシャガッシャ駆けてくるではないか。
クトゥルフだかク・リトル・リトルだか知らないが暗黒神話の怪物を模した不定形怪物までべちゃべちゃ這い寄ってくるにいたっては、花音はもう泣きそうだった。
ハロウィンはホラーの季節でもある。ちょっとしたホラーエッセンスをふりかけたコスプレなら当たり前のレベルで、怖い系の仮装には気合いが入りまくっているものが少なくなかった。古今東西ジャンルバラバラ、有象無象の怪奇コスプレがヌッとあらわれるたび、花音は飛び上がっては後ずさってしまうのだ。そのたび「うわあ！」「ひゃあ！」「ぎゃああ！」と声まで出してしまうので、ホラー仮装の人たちは、わざわざオーバーリアクションをとってくれているのだと思って喜んでいる。だがもちろん、花音はサービスでやっているのではない！
このままじゃ心臓がもたねえ。
冷や汗をぬぐい、花音は胸を押さえた。
もちろんホラーテイストの仮装すべてがダメということはなかった。さっき目の前をよぎった吸血鬼（？）らしき女性ふたり連れくらいならいいのだ。ゴシックというのか上品で、ちょっと怖いが魅力的だった。どうせならああいう雰囲気にしてほしい。
また来るな。
花音の正面がシーサイドタウン駅だ。電車が止まるたび大量の仮装者が吐き出されてくる。ちょうどまた、仮装者で満載の電車がホームに入ったところだ。
とにかく不意打ちがよくない。
奥歯をかみしめ身を強張らせ、花音は来るべきものを待ち構えた。
この直後、
「ぎゃあ魚の怪物っ！？」
「待って待ってボクですマンボウです～」
といったやりとりがあったとかなかったとか。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2023年01月15日
- 参加申し込みの期限
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- 2023年01月22日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2023年01月22日 11時00分
