【生徒会選挙】威風堂々。挑め、生徒会甲子園！！｜リアクション

【生徒会選挙】威風堂々。挑め、生徒会甲子園！！

◆鍋とともに飲み込む言葉

　浅見柚乃、霧生愛、羽生碧南は生徒会甲子園のため東京ドームにやってきた。
　ちなみに３人は『ガッツリ闇鍋大食い勝負』に参加する。きっかけは大会発表後に放たれた碧南の一言だった。

「ねえねえ２人とも、闇鍋に参加しない？」

　その一言に少しだけ時間が止まった気がした。

（唐突におかしなことを言うなあ……）

　愛は碧南のほうを見る。その顔を見るに冗談ではなく、本当に参加するつもりだろう。特に断る理由も無いし、そもそも体育会系である以上先輩のいう事は絶対だ。
　闇鍋大食い勝負は文字通り、鍋をどれだけ多く食べられるかを競う。具材は肉、魚、野菜、お菓子、スイーツ、米にパン、麺など自由。すべての具材を食べると、わんこそばのようにおかわりが投入される。
　また対戦相手校の鍋にギブアップ狙いで食材を投入することもできる。柚乃はトマト、キュウリ、ナスなどの野菜類と味付けにトマトジュース。愛はラーメン、うどん、そば、パスタなどの麺類が中心で、他にいくらか野菜類。

「私はこんな感じ」

　碧南は餅、パプリカ、かまぼこ、シューマイ、スルメイカ、それに唐揚げやエビフライなどの揚げ物類。３人の中では一番闇鍋というものを理解しているかもしれない。
　お祭りの催しに飛び入り参加する感覚で、3人の闇鍋が始まった。
　この攻略に際して３人で決めた方針は『最初からスピードを出して食べまくらない』こと。最初に量を稼ごうとして大量に詰め込むと途端に胃がパンクするし、消化も悪くなって後日の大量不良に繋がりかねないので、焦らずしっかりと食べる。席順は柚乃の左隣に碧南、右隣に愛。
　この席順に柚乃は不満があった。

（なんでこんな奴の隣に……！）

　柚乃の鋭い視線が愛に向けられる。
　柚乃からすれば『こんな泥棒猫に取られてたまるか』という思いが強いし、そうでなくても焦っている。あと半年もしないうちに碧南は卒業してしまう。

（それまでに碧南先輩に自分の胸に秘めた想いを……しかし、打ち明けて拒絶されたらどうしよう）

　行動する前に恐怖が沸き起こり、どうしても立ちすくんでしまう。そんなことを思いながらひたすら胸のうちをごまかすように闇鍋を食べる。当然、愛も柚乃の視線には気づいていた。

（浅見先輩が不機嫌なのは隣に私が座っているからだろう）

　愛はちらりと柚乃を見る。
　柚乃は鍋に意識を向けているものの、それは無理やり他のことを考えないようにするために見えた。

（表面はともかく内心では相当めんどくさく拗らせてるんだろうな）

　愛は嘆息した。しかし今できることは鍋をつつくことくらいだ。それらの感情をごまかすためにひたすら食事に集中する。
　その２人を見守りながら碧南も箸を進める。基本的に好き嫌いはないので、どんなものでもそれなりに美味しく頂ける。よほどまずいのでもない限り順調に食べ進めていく。
　それに碧南も含め３人とも体育会系。女子とはいえ食べる量は半端じゃない。

（鍋は大丈夫そうなんだけどなあ）

　碧南はふたたび２人に視線をうつす。
　この２人はとにかく不仲で、部活の空気を悪くすることもある。以前もそのようなことがあり、そのときは部活帰りのコンビニに立ち寄った際に注意した。さすがにそれ以降は今のところ表立ってぶつかる様子はない。それでも妙なしこりのようなものは残っている。

（どうするのがいいんだろうなあ）

　３人が納得する答え。果たしてそんなものがあるのだろうか。気にしてばかりもいられないので、今は目の前の鍋に集中する。それぞれの思いを抱え、３人は何かを忘れるために限界まで食べ続けた。

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