その一枚に思うこと｜リアクション

その一枚に思うこと

☆放課後の図書室で

　寝子高３年の綾辻綾花は、長いこと図書委員を続けてきた。
　しかし受験生の２学期ともなると、図書委員としての仕事は最近はあまりしていない。
　今日は図書室で、後輩の頑張る姿を見つつ受験勉強をしていた。

（珪先生の姿も見れてやる気アップです）
　図書室には大好きな司書教諭の早川珪先生がいるから、難しい勉強も頑張れる。
　しかし、珪先生は席を立って図書室を出て行ってしまった。
（残念です……そうだ）
　先日猫鳴館の自室を掃除していたら昔の写真が出てきたので、持ってきたのを思い出す。
（珪先生は前から変わらずカッコいいです）
　取り出した写真を見て癒されていると。

「何を見ているんだい」
　いつの間にか戻っていた珪先生に声をかけられ、驚いた。
「あ……１年の時の図書委員の写真です。ちょっと恥ずかしいですね」
「恥ずかしいかい？　どうして？」
　図らずも、珪先生と懐かしい写真を見ながらお話しすることとなった。
「なんででしょうね？　幼いからでしょうか……これは図書委員になりたてでドキドキしてた頃だから写真の表情も緊張してます」
「最初の委員会の時に、学年ごとに揃って記念に撮ったんだったね」
「はじめましての人が多くて名前を覚えるのが大変だった気がします。そういえば先生も新しく赴任されたばかりだったんですよね」
「ああ」
「すぐ慣れましたか？」
「そこら中に猫がいるのには驚いたけど、おかげで緊張がほぐれたかもしれない。図書室はどこも似たようなものだから、ここに来ると落ち着いたしね」
「そうなんですね……私もここに来ると落ち着きます」
　とはいえ、珪先生の顔を見るとドキドキしてしまうのだけど。

「珪先生が笑顔で写るこの写真がお気に入りなんです。手帳に入れて持ち歩いてたんですよ」
「そんなに大事にしてくれていたの？」
「ええ、でも他の先生に見つかりそうになって慌てて鞄にしまったからちょっとよれちゃってますけど」
「それは知らなかった」　
　情景を想像したのか、珪先生は面白そうに微笑んだ。
「図書委員のみんなで写真撮りたいですね」
「いいね」
「なかなか３年生は今の時期は難しいからもう少し先になりそうかな」
「みんな最近は集まらないからね」
「でも実現させたいですね」
　静かな決意を込めて、綾花は微笑んだ。
「今のうちに珪先生の隣予約しておきます」
「ああ……予約なら、優先しなくてはね」
　珪先生も、優しい微笑みを返してくれた。　

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