その一枚に思うこと｜リアクション

その一枚に思うこと

☆幸せの一枚

　寝子高３年の八神修は、休日、星ヶ丘寮の自室で勉強していた。
　難問を解いたところで一息つき、勉強机に置かれた二つ折りの写真立てに目をやる。
　一枚はケーキを持った修と七夜あおいが写っている。
　もう一枚は本を持って見つめ合う修とあおいだ。
　自然なあおいの表情に心を和ませながら、修は写真が撮れたあの時を思い出していた。

　あれは休日、あおいが家に勉強にきた時のことだ。
　世間の男女がどんなふうに二人だけの勉強時間を過ごしているのかは知らないが、修にとってそれは集中して勉強に取り組む濃密で有意義な時間だった。
　とはいえ、休憩の時は飼猫達も部屋に入れる。
　ブルー、ミルク、ブラック、マーブル、パトラ、タイガ、ミスト……たくさんの猫達は、甘えたり寛いだり自由奔放だ。
　あおいは目を輝かせて猫たちに見入っている。
「可愛いね」
　心からの声に、
「じゃ一寸撮って残してみる？」
　と修はデジカメを取り出して、二人で何枚か撮ってみた。
「動かないで～」
　カメラを構えると猫たちは面白がって寄ってきたりして、なかなかじっとしておらずうまくは撮れない。
　けれどそれもまた楽しかった。
「あとで画像送るよ」
　と修は机にカメラを置いた。

「さて、面接対策もしておこうか」
「面接の参考書、見てもあんまり頭に入らないね。本番で緊張した時覚えてられるかな」
　心配そうなあおいに、修は提案した。
「模擬面接みたいに質問し合ってみようか。予行演習だね」
「いいね、やろう！　修君、お手本見せてくれる？」　
　参考図書を手に、あおいが質問を始める。
　修はそつなく質問に答えていった。
「さすがだね。次は……高校生活で一番思い出に残った事は何ですか」
「はい、それは……」
　修は思わずあおいを見つめてしまった。
「高校生活……いつもあおいが一緒にいた気がするよ」
「修君……」　
「ちょっと照れるね。俺の一番はあおいとの一泊旅行かな」
　見つめあう二人。
　
　パチャリ！
　その時、突然シャッターの音がして、二人は驚いてそちらを見た。
「ニャー」
「パトラ！　お前が押したのか？」
　デジカメから逃げていくパトラに驚きつつ、修はデジカメを手に取り画像を見る。
「これは……」
　自然な二人の互いへの想いが、一枚の写真にそっと切り取られていた。
　少なくとも、修にはそう感じられた。
「わあすごい、パトラ、カメラマンになれるね」
（覗き込んだあおいは無邪気に感心していたっけ）

「あおいは今何をしてるかな」
　修はあおいにニャインを送ってみた。
『修君？　今、勉強してるところ』
『そうか。俺は休憩。写真を見てた』
『写真？』
『うん、この前のパトラが撮ったやつ』
『面接練習のあれね』
『そうか、勉強中か。無理せず、でも、頑張ろうな』
　大好きの気持ちを込めて、修はニャインのスタンプを送る。
『修君も、無理しない程度にがんばってね』
『有難う。俺も頑張る。大好きなあおいに応援して貰えたら百人力さ』

　やや間があって。
　あおいから返信が返ってきた。
『うん、私も……』　
　がんばれ、の笑顔のスタンプが続いていた。

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あとがき

担当マスター：天村花海
ファンレターはマスターページから！

ご参加ありがとうございます。
プリントされた写真だけでなく画像だったり、さまざまな思い出の形を見せていただきました。
写真は変わらないのに、時の流れによって見る側の感情が動かされるのは不思議ですね。

これからもらっかみ！の世界で皆様が素敵な思い出を作っていけますように。
またご縁がありましたら、ご参加お待ちしています。

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