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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
I'll be there - 仲良くなりたい、その10
けっして余裕ある広さとは言えないものの、恋々のマンションは2LDKで、参加者七人が座って飲み食いするスペースはあった。もともとあった一台と誰かがもってきた追加の一台、二台のカセットコンロをコタツと補助机にセットし、それぞれ味の異なるふたつの鍋を囲んだのである。
最初は、客からのもらいものというシャンパンの栓を抜いた。赤白のワインがふるまわれるころまではまだ穏やかだったが、どこからか日本酒、さらに焼酎の一升瓶が出てくるにいたって宴は、和気あいあいを通り越しカオティックゾーンへと突入したのだった。アルコールを入れていない暦は、場がぐにゃぐにゃになる過程をじっくりと観察することができた。といっても暗い色は皆無で、始終笑いと歓声、ときどき調子外れの歌につつまれたパーティだった。へべれけに善悪があるのかは知らないが、少なくともいいへべれけであったことは事実だと思う。
帰宅したものはない。いずれも力尽きたようにべたっと床で雑魚寝中だ。一応毛布だの布団だのをかぶっているが、座布団数枚で無理矢理寝ている姿もあった。
「わらわはぁ……部屋に戻るぞぉ」
ろれつの回らない口調で九鬼姫は宣言すると暦の手を取った。眠たげな目をして言う。
「暦はのう、わらわの臥所にくるがよい」
「あの……私そろそろ」
「もう遅い。泊まっていけぃ」
いいから、と四畳半ほどの狭い一室に暦を連れ込む。
「あっちで雑魚寝は酒臭いじゃろ。未成年には毒じゃて」
九鬼姫も今宵はずいぶん酒臭いがそこは言うまい。
「あと、こっちには布団がある！」
なぜか誇らしげに九鬼姫は言って、よろめきながら押し入れを開けてマットと布団を引っ張り出した。
「寝るぞ」
言うなり九鬼姫は布団に入り、脇に寄って空間を空けてくれる。
いいのでしょうか……？
暦はためらいを覚える。
なぜって暦は物心ついたときから、自分のベッドに寝てきたからだ。他人と一緒の床についた記憶はない。
いくら同性の友達とはいえ……同衾し密着しているうち妙な気持ちになったりしないでしょうか。
お互いさわりっこしたりとか、たわむれで唇を重ねてみたりとか……それ以上もいろいろと。
ついそんなことを考えて頬を赤らめてしまうのは、暦がBとLで象徴される芸術文化に接しすぎてきたせいだろうか。いやこの場合はGとLになるのか。
――そうなったらそうなったときですね。
暦は、覚悟を決めた。
「ではふつつかものですが、よろしくお願いします」
正座し三つ指ついてお辞儀すると、そろそろと九鬼姫の横のスペースに入る。やがて、
「……こんなことだろうと思っていました」
苦笑気味につぶやいた。
もちろん、とうの昔に九鬼姫が寝入っていたからである。
でも、これはチャンスかもしれない。今夜は満月だった。試してみようと暦は思う。
暦は眠らぬよう目を開けて、背中に九鬼姫の体温を感じながら深夜二時まで待った。
やがて時計の針が二時を指した。
暦は音もなく身を起こし、窓から入りこむ黄金の光を確認する。
そして九鬼姫の頭に手をかざし、一心に念じたのである。
治ってください。
良くなってください。
せめて進行を遅らせてください――と。
――『I'll be there - 仲良くなりたい、その10』 了
最初は、客からのもらいものというシャンパンの栓を抜いた。赤白のワインがふるまわれるころまではまだ穏やかだったが、どこからか日本酒、さらに焼酎の一升瓶が出てくるにいたって宴は、和気あいあいを通り越しカオティックゾーンへと突入したのだった。アルコールを入れていない暦は、場がぐにゃぐにゃになる過程をじっくりと観察することができた。といっても暗い色は皆無で、始終笑いと歓声、ときどき調子外れの歌につつまれたパーティだった。へべれけに善悪があるのかは知らないが、少なくともいいへべれけであったことは事実だと思う。
帰宅したものはない。いずれも力尽きたようにべたっと床で雑魚寝中だ。一応毛布だの布団だのをかぶっているが、座布団数枚で無理矢理寝ている姿もあった。
「わらわはぁ……部屋に戻るぞぉ」
ろれつの回らない口調で九鬼姫は宣言すると暦の手を取った。眠たげな目をして言う。
「暦はのう、わらわの臥所にくるがよい」
「あの……私そろそろ」
「もう遅い。泊まっていけぃ」
いいから、と四畳半ほどの狭い一室に暦を連れ込む。
「あっちで雑魚寝は酒臭いじゃろ。未成年には毒じゃて」
九鬼姫も今宵はずいぶん酒臭いがそこは言うまい。
「あと、こっちには布団がある！」
なぜか誇らしげに九鬼姫は言って、よろめきながら押し入れを開けてマットと布団を引っ張り出した。
「寝るぞ」
言うなり九鬼姫は布団に入り、脇に寄って空間を空けてくれる。
いいのでしょうか……？
暦はためらいを覚える。
なぜって暦は物心ついたときから、自分のベッドに寝てきたからだ。他人と一緒の床についた記憶はない。
いくら同性の友達とはいえ……同衾し密着しているうち妙な気持ちになったりしないでしょうか。
お互いさわりっこしたりとか、たわむれで唇を重ねてみたりとか……それ以上もいろいろと。
ついそんなことを考えて頬を赤らめてしまうのは、暦がBとLで象徴される芸術文化に接しすぎてきたせいだろうか。いやこの場合はGとLになるのか。
――そうなったらそうなったときですね。
暦は、覚悟を決めた。
「ではふつつかものですが、よろしくお願いします」
正座し三つ指ついてお辞儀すると、そろそろと九鬼姫の横のスペースに入る。やがて、
「……こんなことだろうと思っていました」
苦笑気味につぶやいた。
もちろん、とうの昔に九鬼姫が寝入っていたからである。
でも、これはチャンスかもしれない。今夜は満月だった。試してみようと暦は思う。
暦は眠らぬよう目を開けて、背中に九鬼姫の体温を感じながら深夜二時まで待った。
やがて時計の針が二時を指した。
暦は音もなく身を起こし、窓から入りこむ黄金の光を確認する。
そして九鬼姫の頭に手をかざし、一心に念じたのである。
治ってください。
良くなってください。
せめて進行を遅らせてください――と。
――『I'll be there - 仲良くなりたい、その10』 了
あとがき
担当マスター：
桂木京介
ファンレターはマスターページから！
ご参加ありがとうございました。桂木京介です。
桂木初の『仲良くなりたい』、しかも10回記念の特別編ということで、気合いを入れて（でもいつも通りの文体で）お送りしました。ほぼ時系列順ですが、例によって構成の都合で前後しているところがあることをご了承下さい。
さて今回、特別ルールにより、
・桂木のシナリオに登場する未登録ＮＰＣも指定可。
・未登録ＮＰＣを指定した場合、正式にＮＰＣ登録され、ともだち設定がつく
という条項を用意したわけですが、おそらく多くて2～3キャラだろうと甘く見ていたのですが嬉しい悲鳴と言いますか、なんと7キャラクターも登録することになって驚いています。
ほとんど設定のなかったキャラクター、設定は考えていたけど具体化しなかったキャラもいます。
ご指定いただき、本当にありがとうございました。これからも彼ら彼女らと仲良くしてあげてください。
いつもいつも書いていますが、ご意見ご感想など首を長くしてお待ち申し上げております。
皆さんからいただいた反応が、筆が止まってしまったリアクション制作への活力、次のシナリオのアイデアやきっかけになることもしばしばありますので、昔のシナリオでもまったく問題ないのでお願いします。（今回もへばっていた時点でFLをいただき復活を果たした場面があります！）
それではまた、新たなシナリオでお目にかかるのを楽しみにしています。
桂木京介でした。
桂木初の『仲良くなりたい』、しかも10回記念の特別編ということで、気合いを入れて（でもいつも通りの文体で）お送りしました。ほぼ時系列順ですが、例によって構成の都合で前後しているところがあることをご了承下さい。
さて今回、特別ルールにより、
・桂木のシナリオに登場する未登録ＮＰＣも指定可。
・未登録ＮＰＣを指定した場合、正式にＮＰＣ登録され、ともだち設定がつく
という条項を用意したわけですが、おそらく多くて2～3キャラだろうと甘く見ていたのですが嬉しい悲鳴と言いますか、なんと7キャラクターも登録することになって驚いています。
ほとんど設定のなかったキャラクター、設定は考えていたけど具体化しなかったキャラもいます。
ご指定いただき、本当にありがとうございました。これからも彼ら彼女らと仲良くしてあげてください。
いつもいつも書いていますが、ご意見ご感想など首を長くしてお待ち申し上げております。
皆さんからいただいた反応が、筆が止まってしまったリアクション制作への活力、次のシナリオのアイデアやきっかけになることもしばしばありますので、昔のシナリオでもまったく問題ないのでお願いします。（今回もへばっていた時点でFLをいただき復活を果たした場面があります！）
それではまた、新たなシナリオでお目にかかるのを楽しみにしています。
桂木京介でした。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2022年10月31日
- 参加申し込みの期限
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- 2022年11月07日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2022年11月07日 11時00分
