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「実は僕、日本酒、苦手なんですが……」
尻込みする尚輝にウォルターは「存じ上げてますよー」と微笑した。
「だと思って、日本酒が苦手な人むけの銘柄を選んできました。まるで水みたいな飲み口で、なのにほんのりと胃の腑が温まって……ちょっと試してダメだったとしても気にしないで下さい。あとは僕が空けますので~」
言って尚輝の杯に一升瓶の中身をそそぐのである。
おそるおそる一口した尚輝はほうと一息ついて「これなら平気みたいです」とさっそく半分ほどほしたのだった。
ウォルターさんと呼びかけたいところだが、他のひとの目もあるので遠慮して、先生と柚春は呼びかけた。
「ああ、稲積も飲むかい? って、まだ未成年だったね」
笑ってウォルターは柚春に紙コップを渡す。クーラーボックスから今度は、透き通ったグリーンの瓶をとりだした。
「ノンアルコールのシードルだよ。いわばリンゴのシャンパン、ちょっと酸っぱいかもしれないから味見してみて」
はいとこたえて柚春はシードルを口に含んだ。
林檎畑に立ったかのよう。清涼な香りと味わいで胸がいっぱいになる。炭酸飲料だが気泡はあってないようなものだ。甘さはひかえめでそれゆえに、鼻に抜けるさわやかさが先だった。初めての味覚なのになぜか、思い出のつまったアルバムをめくっているような気持ちにもなった。酸味はあるけれど気になるほどではない。
「……おいしいです」
夢を見ているような口調で告げると、よかったと言ってウォルターは注ぎ足してくれた。
「お郷(さと)の名産品ですか」
「だったらよかったんだけどねぇ。フランスからの輸入品さ。ノルマンディー地方のブランドなんだ。メアリが好きでね、毎年秋にケースで買ってる」
メアリとは住み込みの老メイドのことである。彼女のためにシードルをとりよせているという話に、ウォルターの優しさがうかがい知れた。
「じゃ、改めて乾杯といこう」
「はい」
凪の海と夜風とススキ、天(そら)にいただくは黄金の月、静かな夜会が幕を開けた。
「俺たちはこれを作ってきました」
修がといた包みから、ウサギとかぐや姫の饅頭が姿を見せる。紅白であざやか。不揃いなのがむしろ愛おしい。
温かいものもほしかろうと、時子は魔法瓶のお茶を示した。饅頭にも団子にもマッチする味覚だ。
「月が綺麗ですね」
空を見上げて尚輝が言うと、
「そうですね」
と時子がこたえる。
いくらか聞こし召しているせいか、頬がうっすら赤い尚輝である。でも深酔いや悪酔いをしている様子はなく、彼らしくないかもしれないが杯を片手に、リラックスして月を眺めている様子だ。尚輝の杯は透明で綺麗だけれど、とても小さいものだった。たぶんウォルターが気を利かせたのだろう。
「五十嵐先生は」
ウォルターが一献、尚輝にさして問いかけた。
「日本の古典に詳しいですか?」
「いえ、全然……」
尚輝が返杯しようとすると、いいですいいですとウォルターは遠慮して、尚輝よりふたまわりは大きな杯になみなみと手酌した。
「先生はご存じでしょうか。夏目漱石がある英文を、『月が綺麗ですね』と訳したという逸話を」
分量だけいうなら、ウォルターはとうに尚輝の三倍から四倍近く日本酒をあけているはずだが、あいかわらず飲み方が上品というか、まるで酒の気配を感じさせない。このときもすうっと、流しこむようにして杯を空にした。
「初耳です。原文は"Moon is good.”とかですかね?」
尚輝らしい回答ではある。けれどウォルターはもちろん、時子も柚春も笑ってしまった。
「ま、まちがってましたか……?」
「たしかに正解ではないですが、けっしてバカにしているわけではなくて、先生らしい素敵な発想だと思いますよ。だから僕は五十嵐先生が好きなんです」
「あ、ど、どうも……」
正面切って好きと言われたせいか、尚輝はみるみる紅潮してしまう。ウォルターのほうは逆に、なんらてらいはないらしく笑顔のままつづけた。
「元の英文はね、"I love you.“なんですよ。英語教師をしていたころの漱石が、学生にこの言葉を翻訳させたという話です。『我そなたを愛す』なんて訳した生徒に、日本人はそんな直截に愛を伝えることはせん、『月が綺麗ですね』とでも訳しておきなさいと教えたという……」
「そうなんですか」
とこたえた尚輝の声がワンオクターブほど高いように時子には聞こえた。はからずも直前に、時子に対しこの言葉を口にしたことを意識しているのだろうか――考えすぎだろうか。
「でもね実はこれ、俗説なんです。漱石が本当にそんなことを言ったのか、正確な記録は残ってないんですよ。誰かの作り話かもしれません」
「そうなんですか」
まったく同じ言葉をくりかえしつつも今度は尚輝の声が、多少なりともがっかりしているように時子には聞こえた。これもやはり、時子の考えすぎかもしれないが。
それにしてもと嘆息するように尚輝は言う。
「ウォルター先生は外国のお生まれなのに、日本の文学にもお詳しいんですね」
恥じ入ったように尚輝はうなだれている。
「僕なんかこの歳まで国内で育ったのにさっぱりで、お恥ずかしい限りですよ。文学なんていっても中学時代に読書感想文のために読んだ島崎藤村の『破戒』くらいしか覚えてなくて……」
これを聞くやウォルターは恐縮したように返すのである。
「五十嵐先生、そんな卑下をしないでください。たまたま僕は文学にも興味があっただけですから。たしかに僕の興味関心は広いかもしれませんが全部浅いので……だから科学に造詣の深い五十嵐先生のことを、僕は尊敬してるんですよ」
心からそう思ってます、と断じてウォルターは尚輝の手を取った。
まるで尚輝が愁いの姫君で、自分が姫を慕う騎士であるかのように――。
欧米では当たり前のムーブメントかもしれないが、少なくとも柚春にはちょっと馴染みのない動作である。見ている柚春のほうがなぜか、目の下あたりが熱くなるではないか。
当然尚輝のほうも慣れていないようで、
「そ、そうですかどうも……」
としどろもどろ返すのが精一杯のようだ。
「島崎藤村といえば、先生はご存じですか」
尚輝から手をはなすと、ケロリとしてウォルターは言う。
「藤村はクリスチャンで女学校の教師でしたが、教え子の少女と恋愛関係におちいって自責のあまり棄教して辞職したんですよね」
ウォルター先生――!
時子と柚春は同時に戦慄した。
天然素材のウォルターのことだからとくに他意もなく気軽に発言したものだろう。
だがこのトリビアは、爆弾を投げ込んだに等しい衝撃を与えるものだった!(少なくとも柚春と時子には!)
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
オールジャンル
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2022年09月21日
参加申し込みの期限
2022年09月28日 11時00分
アクション投稿の期限
2022年09月28日 11時00分
参加キャラクター一覧
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