眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！｜リアクション

眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！

　配属先が０歳児クラスに決まった鴻上彰尋は、親からの連絡帳を読み込んで、今朝の機嫌や食欲についてなど気になる記述がないか確認していた。
　保育園に着いた時には機嫌が良くても、親が居ないと気付いたら泣いてしまう子や、人見知りしない子。感覚が鋭くて拘りの強い子や何でもおおらかに受け入れられる子。性格の異なる双子の弟妹を見てきた彰尋には、こんなに小さくてもすでに性格や好みがあるのだと知っていたからだ。
　ちょうど彰尋が小学校低学年頃、双子で生まれてきた年の離れた弟妹に家は大騒ぎだった。
　お兄ちゃんになるのだという自覚が先か、少しでも手伝いたいと思ったのが先か。構って貰えなくなって我が儘を言ってもおかしくない年頃だというのに、むしろ当時の彰尋は出来ることが限られていることへ歯がゆさを覚えた。
　寝ている隣で静かに本を読んでいるだけなのに、いつもと人の気配が違うと気づくのか泣き出してしまうし、落とさないよう首を支えてしっかり抱き上げるのも難しく、誰かに手伝って貰わなければミルクをあげることもままならない。
　それから月日は流れ、小さな腕も大きくなった。幼い子供を片腕で抱き上げられる力も付いたし、弟妹をあやすことで小さな子と触れあう自信もついた。
　あの時には出来なかったことが、今なら――。
「ふゃ……」
　それまで静かに寝ていた子が、ぎゅうっと眉間に皺を寄せている。
　今にも泣きそうで、彰尋は名前を再確認して傍へ寄った。
「ひなみちゃん、だね。大丈夫だよ」
　この子は抱き上げるよりも、最近は転がるのがお気に入りらしい。上手く寝返りが出来なくて、機嫌が悪くなってしまったのだろうか。
「少しコロコロしようか、お手伝いをさせてね」
　最初は軽く揺するような動きで、眉間の皺が取れてきたら背中が浮くくらいの強さで。
　手足をパタパタ動かして、懸命に転がろうとしている様子にホッとする。
「よーし、ごろんってするよ？」
　うつ伏せは危ないので、勢いをつけて１回転。ちょうど、いないいないばあと同じ状況になって、ひなみは彰尋と目が合うとニコニコしている。
「凄いね、ごろんってできたね」
　大げさに驚いてみたり、笑ってあげる。弟妹たちには動揺の方が気取られて、上手く伝わらなかったのかも知れないけれど……今ならちゃんと安心感を伝えられる。
　言葉だけでなく表情で伝えれば、相手だって仕草で返してくれると信じて、彰尋は懸命に園児たちと接した。