眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！｜リアクション

眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！

「――はい、そこまで」
　すんでの所でその腕を掴みあげたのは、花音だ。サイレンレッドのお面を被り、颯爽と現れる様はまさにヒーローだった。
「手は誰かを守るために振り上げるんだ。今、何のために手を上げた？」
「……とられたの、くやしかったから」
「最初にみんなで使う物を盗ったのは、誰だ？」
　少年は言葉に詰まって、ぎゅうっと拳を握りしめる。ヒーローに怒られているというのが、余計に苦しいのか肩まで震わせるので、花音は泣かせてしまうかもしれないとオロオロし始めた。
　何かフォローをしなければ。智依子は大きな声で、積み木で遊んでいるグループに声をかける。
「みんな！　時計の長い針が６の所に行ったら、積み木を貸してあげてもいいかな？」
「うん！　じゅんばんねっ！」
　ニコニコと微笑むクラスメイトを見て、少年はバツが悪そうにすぐ下を向いてしまうけれど。花音はポンッと背中を叩いてやって、大丈夫だと伝えるようにしっかり頷いて見せた。
「……つみき、とっちゃってごめん」
「いーよー。……だって、ねえ？」
　積み木をとられた子たちは、いつものことなのか気にしてない様子だ。楓も「みんながいいっていうなら」と握手を申し出ているし、子供たちのルールがあるなら深くつっこむべきではない。
「おねーちゃん、あのね、ゆーまくんはね……」
　先ほど手を引っ張った子が、くすくすと笑いながら「しゃがんで！」と内緒話を教えてくれる。
　どうやら彼は、特に可愛い子への接し方がわからずに、意地悪をしてしまうことが多いらしい。
　理由はわかれど、あまり良いことでもない。
「じゃあ……」
　智依子が思案していると、子供たちのはしゃぐ声が一際大きくなった。ジャングルジムと化した花音が両腕に園児をぶら下げているのが見えて、元気が有り余ってることだけは伝わってくる。
（みんなが取り合いのしないもの……そうだわ）
　彼の着けているお面の戦隊ヒーローや女児向けアニメのＥＤ曲は、踊れるものが多い。しかも振り付けの難易度は、小さな子でもちょっと頑張れば踊れる程度に簡単すぎず難しくない。
　智依子は教室に置いてあるタブレットを操作して、目当ての楽曲を探した。
「みんなー！　両手を広げて飛行機のポーズ。くるっとまわって……誰にもぶつからないかな？」
　何が始まるのかと不思議な顔をする子も、もしかしてとワクワクする子も。できるだけ表情の機微に気がつけるように、智依子は教室中を見渡して音楽を再生する。
　誰もが知っている、超戦隊サイレンジャーの曲にワッと歓声があがった。
「知ってる子は、まだ覚えてない子に教えてあげてね。難しい子は、簡単にしちゃおう！」
　普段から楓と踊っている智依子にとって、知っている振り付けをアレンジするのは簡単だったが……慣れない花音には初見で踊れと言われているも同然で、子供たちに教わりながら踊ることとなった。

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