眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！｜リアクション

眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！

　ご近所付き合いで、小さな子供たちのお世話経験がある綾辻綾花は、先生方の危機にぐっとやる気を見せ、さらに同じクラスを担当することとなった早川珪に「頼りにしてるよ」なんて言われたら、ぐぐっとさらに気合いが入る。
　担当するのはイヤイヤ期真っ盛りの悪魔の３歳児クラス。少々手こずるわんぱくな子もいるけれど、親とも先生とも違う見知らぬお姉さんとお兄さんに、少し緊張している子もいるようだ。
　絵本を抱えてチラチラと様子を窺う子を見つけ、綾花は目線を合わせて微笑みかける。
「どうしたの？」
「きのう、せんせーがね、えほんのやくそく……」
　でも先生はお休みだ。
　ぎゅっと大事そうに絵本を抱きしめている様子から、とても楽しみにしていたのだろう。
「やくそくしたのは、せんせーとじゃん。おにいちゃんがいるなら、サイレンジャーごっこがいい！」
「えーっ!?　だったらおねえちゃんと、おままごとできる？」
　己の主張を譲らずにわっと群がる様子は、無邪気な子供そのものだ。珪も得手不得手はあるが時間の限り付き合ってあげようと、子供達の主張をまずは耳を傾けている。
「昨日は何で遊んだのかな？」
「きのーなんてかんけいないの！　おにーちゃんたちとあそぶの!!」
　地団駄を踏む園児を簡単に宥めることはできないだろう。１人に構っていれば別の子がかんしゃくを起こしかねない。
　だけど綾花は慌てることなく、園児から見える位置に手を掲げてカウントをする。
「絵本に、サイレンジャーごっこ、おままごと……すごいね、遊びたいことがいっぱい出てきました」
　お絵かきもしたい、お遊戯もしたい。口々にあがる希望に合わせて指を立てると、綾花は左手は開いて右手はピースサインの状態となった。
「じゃあ数の数えられる子はいるかな？　何本でしょうか！」
　突然始まったクイズに、子どもたちは興味津々だ。自分の手を指折り数えてみたり、壁に貼ってあるひらがなやアルファベットの表に書かれた数字に注目したりして、言い争っていた園児もそんなことは忘れて夢中になっている。
「えっと、ご？」
「となりのおててもあるから、ななー！」
「そう、７です！　んー……何かの絵本にも、７人の性格が違う人が出てくる物語があったと思うんですけど」
　なんだったかなぁ、と考え込む素振りを見せる綾花は、絵本を抱えている園児に声をかけた。
　すると、ぱぁっと明るい顔をして本を差し出してくれる。
「しらゆきひめ！　こびとさんがね、ななにんでてくるよ」
「ありがとうございます！　この７人は、どうやって仲良くしてるのかな。知りたくないですか？」
　そう声をかければ、綾花の周りにはお行儀良く座る子どもたちが集まった。
　きっと普段から、本を読むよと声をかければ座って聞くと教えられているのだろう。それ自体は先生や保護者による躾の賜物でも、まとまりの無かった園児たちの気をひとまとめにしてしまった綾花の話術も凄いことだ。
　声を変え、抑揚を変え。飽きさせないよう工夫を凝らし読み聞かせる綾花に、誰もが引き込まれていた。
「おにーちゃんは、わるいまじょの役なの？　おうじさまの役なの？」
　聞き手に徹することができると思っていた珪は、そう聞かれるのが予想外で――だけど綾花はなんだか嬉しそうに笑うから。ひとまず声を変えるのが大変そうだと思ったときに助け船を出そうと、隣に座ることにした。

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