眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！｜リアクション

眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！

　しぶき保育園では、何度か地域交流会が開かれている。
　それが今日だったことを通りがけに思い出した鴻上彰尋は、どんな様子なのか少し見てみようかと外から園内を覗いて見た。
（……あれ？）
　園庭をかけまわる子どもたちが元気で振り回されてしまうのはわかる。けれど……なんだか賑やかというよりも、慌ただしいと感じるのは気のせいだろうか？
　同じように思うのは自分１人ではなかったようで、三折部朝衣が不安げに何度も保育園を振り返る保護者へと声をかけていた。
「何かあったんですか？」
「それが……今日は先生が少ないみたいで」
　病気で欠勤、怪我で安静、人助けで遅刻中などなど。重なるときは重なるもので、保育士の数がいつもより少ない。幸か不幸か、地域交流会の日ではあったので、子どもを見ていてくれる人はいるのだけれど……それでも我が子を預けるとなっては心配もあるだろう。
　朝衣は卒園生として、何より普段から地域のために働く公務員として、見て見ぬ振りはできなかった。少しでも安心してもらえればと、公務員であることを告げる身分証を提示しながら微笑む。
「子育ての経験はないですが、後学のためにも協力させてください」
　それを見ていた彰尋も、学生証は持ち歩いていただろうかと鞄に手を入れつつ、声をかけた。
「あの……！　寝子高生です、小さな弟妹がいるのでお手伝いできます」
　パートの時間が差し迫っていた保護者は、手短に感謝の意を述べ去って行く。安心して迎えに来てもらえるように、２人はお手伝いに来た旨を告げながら建物へ入ったのだけど。
「ま、待ってー！」
　出迎えたのは、片手におむつを持った綾辻綾花の悲鳴だった。
　何事かと確認するまでもなく、廊下にはやけに開放的な姿で走ってくる２、３歳の男の子。間違いなく、悲鳴の元凶だ。
　追われれば逃げたくなる物。真正面から捕まえに行ったって、小さな子どもはスルリと脇を抜けてしまうだろう。こういうとき、弟妹たちの気をどうやって引いていただろうか。彰尋は少年と目が合うと、魔法の言葉を唱えるように指を差した。
「……だるまさんが転んだっ！」
　ピタッ！
　それは少年だけでなく、追いかけていた綾花にも効力が発揮され、廊下は一瞬静かになった。その隙を狙うかのように少年を抱き上げたのは、早川珪だ。
「はい、追いかけっこはズボンを履いてからね。……助かったよ鴻上くん。ありがとう」
「いいえ。動けるようになると大変ですよね」
　動けないと油断している乳児こそ、何をしでかすかわからなかったりもするのだけれど。
　とにかく、保育園の人手が足りていないのは十分伝わったので、彰尋と朝衣は手伝いが必要なクラスを聞きに行くことにした。

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