眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！｜リアクション

眠れば天使、起きれば悪魔、遊ぶ姿はsuper cute！

　名簿に目を通して、担当する園児たちの顔と名前を一致させようと名を読み上げて挨拶する八神修は、同時に先生からの評にも目を通した。
　仲のいい友だちの名前、得意なこと苦手なこと。そういったことが少しでも把握できれば、何事にも対処しやすい。担当することになったのが、言葉も明確に使えて自分の意思で動き回る年長だからこそ、あまり子ども扱いしすぎず意思を尊重するためにも理解が必要だと考えた。
　そんな細やかな心配りをする修と対照的に、七夜あおいは正面からぶつかりあう対応をとった。実際に話して、保育園では何が流行っているのか、わからないから教えて欲しいと素直に尋ねる姿は、人見知りをしない園児たちには好感触なようだ。
　人に教えられることがあるのを得意げにする子もいたし、同じ目線で輪に混ぜてもらおうとするのも良かったのだろう。
（さすが５人も弟妹がいる長女だ、参考になるな）

　残暑も身を潜め、秋風がちらほら吹くようになったけれど、園庭を動き回る園児たちはスモックを脱ぎ散らかしてしまったり、喉が渇いたと際限なく飲もうとするので、体調不良を起こさないように気を配るのも大変だ。
　高い遊具の近くには、あおいがついている。修は気になる園児の動向をあとで報告できるようメモをとりながら、スモックをきっちり畳んで転がしたままの水筒を拭いて縁側に並べていき、全体を眺めるように意識した。
　そんな一歩引いた位置にいる修へ声をかけたのは、以前の交流会で知り合った子だ。
「おにーちゃん、前も来てくれた？」
「ああ……覚えててくれたんだな」
　名簿を見て、もしかしたらとは思っていた。忘れているかも知れないし、こちらから声をかけなくても良いかと、そっと見守るつもりでいたから、この声かけは嬉しかった。
　あの時はちょっとした……まあ、この島らしい珍事も起こって大変だったけれど、その時の経験が今日の糧になっていると信じている。
「もう年長さんだからね！　はくじょーなことはしないよ」
　背だってのびて、嫌いな物もひとくちなら食べられるようになって。大きくなったんだよと笑う園児の成長に修の胸はちょっぴり熱くなった。人の成長を目の前に、自分は何が変わっただろうかと改めて思う。
　そんなじんわりした感情を、子どもたちの歓声がかき消していく。どうやら、ジャングルジムが混雑し始めたので、順番待ちの園児が飽きないようにと、あおいが抱え上げてくるくるまわっているらしい。
「もういっかい！」
「順番のお約束したでしょ？」
　混乱は起きてないけれど、このままではあおいが目を回して倒れてしまう。修は話しかけてくれた園児に行ってみようかと声をかけて、あおいの元を訪れた。
「面白そうなことをやってるね、手伝おうか？」
「お願い出来る？　年長さんともなると結構ハードだけど」
　弟たちが小さいときに気に入っていたというこの遊びは、確かに小さな子たちに大人気なのか、ジャングルジムの混雑緩和の策だったはずがジャングルジムから降りて並ぶ子がいる始末だ。
「せっかく期待して並んでくれてるんだ、できる限りは応じよう」
　それに、自分の子どもとはめいいっぱい遊んでやりたい。同じように寂しい思いをせず、兄弟に囲まれて笑って過ごせる家庭を作りたい。
　そのためには、こんな予行演習も悪くない。

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