体感ホラー『ねい子さんの呪いの館』｜リアクション

体感ホラー『ねい子さんの呪いの館』

●一緒にドキドキ体験したい

　9月に入ってしばらく過ぎたというのに、寝子島は未だに夏の盛りかと思うくらい暑い。
　初瀬川理緒が今、海に行ってもいいんじゃないかなと思えるくらいに。
「何か涼しそうなことないかな」
　涼しくなるようなイベントないかな、とSNSのタイムラインを見ていたら体感型お化け屋敷『ねい子さんの呪いの館』の話題が上がっていた。
「体感式お化け屋敷か……」
　『ねい子』なる人物の残した呪いが満ちる『館』にまつわる謎を解き、恐怖から脱出せよ！　という設定。
　フロアに再現されたリアルな恐怖の造形。テーマや謎、仕掛けなどが設定された部屋。
　恐怖演出だけでなく、謎解きミッションもあるお化け屋敷。
　イベント情報を見て面白そう！　と興味が湧いてきた。
　行ってみたいが、一人で行くのはちょっと……という時に『カップルは参加料金の割引あり』の文字が目に入った。
「カップル割引？　いいわねコレ」
　大学の夏休みは9月半ばまで、というが、あと数日で終わる。それなのに夏バテしそうなほど暑い。
　リアルなお化け屋敷に行き、恐怖体験で涼しい気分になるのは悪くないが一人では……。
　カップル割引があるので佐和崎紗月を誘い、一緒にお化け屋敷で楽しもうと思い立った。
「グラドルの仕事もオフだし、紗月を誘って行ってみようかしら」
　さっそく携帯を手にし、紗月にお誘いの電話を。
　自室で暑さでダウンしかかっている紗月は、だるそうに理緒からの電話に出た。
「紗月、シーサイドタウンの雑居ビルでやってる『ねい子さんの呪いの館』に行かない？」
「ねい子さん？　体感型お化け屋敷の？」
「そう、それ」
　楽しそうに言う理緒のお誘いをどうしよう？　紗月は迷ってしまう。
（正直、ホラーは苦手だけど……）
　理緒が行きたそうにしているのが電話越しの声でわかるので「いいわよ」と誘いに応じた。
「決まりね。待ち合わせは雑居ビル前ね。時間は……」

　約束の時間より少し早く着いた理緒は、紗月とドキドキな体験ができることを楽しみにしていた。
　あいにくの雨だが、イベントは室内で行われるのだ問題ない。
「理緒ちゃん、待った？」
「ちょっと前に着いたところだから大丈夫よ。行きましょう」
　受付で料金を支払う際、カップルであることを告げる。
　割引された料金を支払い、二人は呪いの館の入口へ。足を踏み入れた途端、紗月が身震いした。
「大丈夫よ、紗月。私がついているから」
「理緒ちゃん……。頼もしいわ。謎解きは私に任せて」
　紗月は謎解きに集中することで、少しでも恐怖を紛らわせることができると思った。
「それじゃ、私は謎解きになるようなものがないか探す担当で」
　二人一緒ならねい子も謎も何のその、という意気込みで呪いの鏡の部屋へ。

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