体感ホラー『ねい子さんの呪いの館』｜リアクション

体感ホラー『ねい子さんの呪いの館』

●人形もBLがお好き？

「次は呪いの人形の部屋か」
　蒼留人の足取りは重いが、ここに入って謎を解かないと次に進めない。
「言っておきますが、私が鏡の部屋で驚いたのは演出のせいではなく、誰かがいきなり大きな声を出したからですからね」
　呪いの人形の部屋に入るなり、マーガレットは蒼留人に反省してくださいと言った。
「悪かったよ……」
　ここには何があるんだ？　と蒼留人は部屋の中をじっくりと見る。
「……うわ、すごい人形の数だな」
　呪いの人形の部屋に入るなり、蒼留人は日本人形の多さに驚いた。
　人形は置いてあるだけだよな？　恐怖演出はないよな？　と思っていたら、日本人形が動き出した。
「こいつら動くのか！　……気味が悪いな」
　それだけでなく、人形から実体化した悪霊が姿を現して脅かしてきた。
　日本人形だけでも気味悪いのに、特殊スクリーンから出てくる悪霊が怖さを醸し出す。
　悪霊が出てくる演出が終わった時、二人は中央の卓にパネルがあることに気づいた。
「何だこのパネル……ひらがな三文字を卓の真ん中のへこみに入れるのか？」
「へこみにパネルを正しい順番ではめこむことができれば、次の部屋への扉が開く仕組みなのでしょう」
　何かヒントは……と部屋を見渡すと、人形の柄が目についた。
「柄がヒントではないでしょうか？」
　マーガレットの一言に、そうかもしれないと蒼留人は一体の人形を手に取って服の柄をじっくりと見る。
　服の柄はピンクの矢絣だった。
「柄がヒントって……服に文字でも入ってるのか？」
　手にした日本人形の服を矢絣をよく見ると、一部、ひらがなの「や」と書いてあるように見える。
（やって……まさか？）
　そんなことを考えていると「次は、やお……」というマーガレットのつぶやきが聞こえた。
　BLの次は「やおい」とかないよな？　と心配する蒼留人。
「いや、たぶん、ここは、やおやとかかも？　上から読んでも下から読んでもやおや。なんて」
「そ、そうだよな、ハハ……」
　やおいと言うかと思ったが、やおやと言ったのでホッとした蒼留人がパネルをはめこむ。
「や・お・や……と。頼む、開いてくれ」
　祈りながら順番にはめこむ。
　三つ目のパネルをはめ込み終えると、扉はゆっくりと開いた。どうやら、これで合っていたらしい。
「ねい子さんの部屋に行くぞ。大丈夫だ、俺がついてる！」
　マーガレットの手を取り、ねい子さんの部屋へと歩き出した。
「あと、響君、そんな大きな声出さなくても聞こえますよ」

　ねい子さんの部屋に辿り着くには、真っ赤に染められた長い廊下に区切られた複数の区間の扉を開かなければならない。
　廊下の入り口付近に置かれている鍵付きのキーホルダーを手に取り、マーガレットが先に進む。
　これが最後。終わったらさっさと出る。
　そんなことを考えながら、蒼留人はマーガレットを庇うように歩き出す。
　おびただしい数のお札が貼りつけられた扉は気味が悪い。
　左右に連なる割れた窓から、亡者たちが手を伸ばして二人を捕らえようとするので捕まるもんか！　と必死に振り払う。
「後ろから何か来ます！」
　マーガレットが振り向くと、ねい子さんの幻影が恐ろしい声を発しながら迫ってきた。
「悪霊に迫られても嬉しくないぜ！」
　ラップ音が聞こえたり、亡者の手が伸びたり、大きな声を発して追いかけてくるねい子さんの悪霊に驚いたりしつつ、どうにか最後の扉を開けた。

このページにイラストを設定する