ある迷宮で手繋ぎを・幽｜リアクション

ある迷宮で手繋ぎを・幽

柚春はウォルター先生と手を繋いだまま、シーサイドタウンへ戻ってきた。

「そういえば、稲積はホラー映画はよく見るのかなぁ？」
「ホラーは好んで見ないかな。特に和風は……出てきそうだし」
「その気持ちは僕も分かるかもしれないなぁ」

ウォルター先生はそう言って、柚春と繋いでいる手を少し持ち上げる。

「じゃあホラー映画を一緒に見るときは、こうやって手を繋いでいないといけないねぇ」
「うん……そうだね」

夕陽の中、柚春は顔を赤らめて、それでいて嬉しそうな表情で答えた。

綾花と珪先生は寝子高に戻っていた。隣には手を繋いだ珪先生の姿がある。綾花は安心して地面に座り込みそうになった。

「珪先生が無事で良かったです」
「綾辻さんも無事で良かった」

柚乃は桜花寮の前にいた。もちろん隣には先輩の碧南がいる。

「脱出できましたね」
「うん。ちゃんと家に帰れて良かったわ」

碧南は繋いだままだった手を離す。
それに少し寂しさを感じながら、「そうですね」と柚乃は言葉を返した。

気がつくと修とあおいは寝子島図書館の前にいた。夜のように暗かった空は、夕空になっている。

「夏だからホラーハウス的な異変だったのかもね。遊園地なら俺はコースターに乗りたいよ」
「コースターならゆっくり話せそうだね……あ」

あおいが繋いでいる手を見つめている。

「怖かったけど、修くんがいてくれたから心強かったし、かっこよかったよ。ありがとう、たくさん助けてくれて」

離れていくあおいの手。それを、修はもう一度繋ぎ止める。

「修くん？」
「もう夕方だから、送って行くよ。だから、もう少し手を繋いでいよう……？」

その顔はやや赤い。夕陽の色だけではないようだ。

「うん」

あおいは頷いて、修の手を握り返した。

このページにイラストを設定する