ある迷宮で手繋ぎを・幽｜リアクション

ある迷宮で手繋ぎを・幽

目隠しをされたメイドの姿が目に入った。物言わぬままたたずんでいるが、姿ははっきりとはしておらず、霊なのかもしれない。移動する様子も見られない。

だからといって、うかつにその近くを通るのは危険な気がした。修は空いた方の手で、進む方向をあおいに指し示す。あおいも頷くだけにして、静かにその場を後にした。

見つからないように、喋らないまま、目くばせで行く方向を珪先生に伝える。ここに来るまでに通ってきたところではなく、メイドが待機しているところでもなく。綾花の目くばせに珪先生は気づいてくれ、無言で頷いた。綾花は深呼吸をひとつ。

（大丈夫、大丈夫だから）

緊張で自分の心臓の音がやけに大きく聞こえてくる。綾花は珪先生の傍を離れないよう、静かに歩き出した。

「お疲れさまです」

離れた場所に見える直立不動のメイドたちに向けて、柚春は小さな声で呟きながら、ぺこりとお辞儀した。距離があるから気づいていないのか、メイドたちは微動だにしない。

「どうしてお辞儀したのぉ？」
「だって仮装……だよね？」
「そうかなぁ……？」
「最近の映像技術は凝ってるし、そっちかも」

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