旧市街の外れに、その屋敷はあった。
建て増しが繰り返され、歪な様相を呈したその屋敷には母屋が3つに、数え切れないほどの離れが乱立し、和風建築と洋風建築が入り乱れている。敷地内に張りめぐらされた塀は入り組んでいて、草も木も生え放題の荒れ放題。一度入り込んだら容易には出られない、迷宮を思わせた。
近隣でも良く知られるその異様さは、噂によれば屋敷の持ち主と、設計を担当した建築家との間に起きたトラブルが原因であるとも言われている。我の強い建築家が発注者の希望を幾度も覆し、現場の空気は極めて剣呑であったとか。建築家が家主の妻と浮気し、泥沼の刃傷沙汰へと発展したとか……。
ともかく、奇妙な屋敷には変わり者であった建築家の意思が存分に組み込まれているのだという。
そして現代。どういう理由か、住む者のいなくなった屋敷はたいそう不気味がられ、多くの突飛な噂や怪談を生むことにもなった。
「それが、このお屋敷なんですか……?」
「かもしれない。この異様な光景を見るとな」
クルト・エールヴァールが、居候先のカフェの客に聞いたという噂を語って聞かせると、
嘉島 和穂は不安げに眉を寄せた。
気が付けば、見たことのない場所に立っている。かたわらに恋人の姿があったことは、お互いにとって不幸中の幸いだ。
今いるのは洋風の母屋らしき建物の2階だが、窓の外を覗けば和洋折衷で形もさまざまな建物がいくつも目に入る。敷地は蛇のようにくねり続く塀によって仕切られており、どちらが出口なのか見当もつかない。
空は昼間にしては暗く、黒雲が頭上にとぐろを巻いている。
「また奇妙な現象に巻き込まれたか? いずれにしろ、あまり長居はしたくないな。和穂ちゃん、歩けるか?」
「は、はい! クルトさんがいますし、大丈夫で……」
言いかけて、気づく。
「誰か……います?」
クルトが和穂を自身の背中へ隠すように前に立ち、廊下の先を見据える。
そこには、見知らぬ男の後ろ姿があった。手に持っている細長いものは、よく見れば、日本刀だろうか。
ぐるりと男が振り返る。
男には顔が無かった。えぐられたようにぽっかりと、穴が開いていたのだ。
「ひ……!」
和穂は思わず、クルトの手を強く握り込んだ。
こんにちは、鳴葉ゆらゆです。
クルト・エールヴァールさん、嘉島 和穂さん、ガイドにご登場いただきましてありがとうございます。
ご参加いただける場合、ガイドのイメージにかかわらず、自由にアクションをお書きください。
概要
星ヶ丘の郊外にひっそりと建つ奇妙な屋敷は、知る人ぞ知る心霊スポットになっています。
迷いこんだらそのまま行方不明になってしまうとか、カップルが破局に追い込まれるとか、
不穏な噂の絶えない場所です。
あなたはどうやら、そんな場所へと迷いこんでしまったようです。
迷宮のようなこの屋敷から脱出するには、数々の障害を乗り越えなければなりません。
屋敷では、主に2人以上で行動することになります。
一緒に行動したい方がいる場合は、GAを組んでください。
お一人でのご参加の場合は、ランダムでほかの参加者と一緒に行動したり、
NPCやモブキャラクターと行動したりすることになるかもしれません。
迷宮を突破するためのコツは、「手繋ぎ」です。
パートナーと協力し、相手を信頼するために手を繋ぐことで、
数々の仕掛けを上手に攻略することができるでしょう。
ただしこの屋敷には、仲間の不信感を増し、仲違いさせてしまう、
不気味なオーラが満ちています。
油断すればすぐにささくれた気分になり、相手が憎らしく思えてきてしまいます。
また、屋敷内に存在する障害や徘徊する幽霊もまた、
仲間を分断させようとしてきます。くれぐれもお気を付けください。
その代わり、見事困難を突破することができれば、お互いの仲はさらに深まることでしょう。
アクション
屋敷の中には、いくつかの障害があり、敵が徘徊しています。
これらは、パートナーと協力したり、手を繋いだりすることで、より攻略しやすくなるようです。
なお以下の情報は、噂やねこったーなどを通じて、PCさんが知っていても構いません。
<障害・敵の例>
・走る鋸刃
建物の廊下に現れる、回転する丸鋸の刃。
一人をどこまでも追いかけてきます。
追いかけられているほうが囮になっている隙に、
もう一人が障害物を用意したり、安全な場所を確保しましょう。
・塀の迷路
不規則に伸びる塀は非常に入り組んでいて、まるで迷路です。
一度はぐれたら、二度と出会うことはできないかもしれません。
・さまよう炎
敷地内の建物や草木を燃え移りながら移動している炎。
消火することはできないようです。
触れれば熱く、煙に巻かれれば視界を遮られ、呼吸困難に陥ってしまうでしょう。
・顔のない男
日本刀を持った、身なりの良い男の霊。顔がえぐられたように穴が開いています。
男に狙われている時間が長くなるほど、意識が遠くなっていきます。
誰かと手をつないでいると、意識の喪失を防ぐことができます。
しかし男は、つないだ手を目がけ、日本刀で斬りかかってきます。
・男女の霊
痩せぎすな男と、着飾った婦人の霊。手をつないでいます。
仲の良さそうな友人・カップルなどを見つけると、恨みがましい顔をして、
壁をすり抜けながら襲いかかってきます。触れられると生命力を吸われてしまいます。
ケンカしたり険悪な雰囲気を見せつけたりしてやると、去っていきます。
・メイドたち
敷地内のあちこちに、物言わぬままたたずむメイドの霊たち。
なぜか目隠しをされています。
移動することもありませんが、話し声や物音を聞きつけると大声で叫び、
顔のない男の霊、男女の霊のいずれかを呼び寄せます。
近くを通る際は、メイドの気を引かないよう、
目くばせや身振り手振りによる意思疎通が重要になるでしょう。
上記はお好みのものを自由にご指定いただいて構いません。
マスターにおまかせもOK。
いくつかの障害を突破すれば、脱出することができます。
見事突破して、パートナーとの絆を深めてください。
NPCについて
登録済みのNPCなら、特定のマスターが扱うキャラクターを除き、基本的に誰でも登場可能です。
NPCもいっしょに迷いこんでしまったようです。
Xイラストのキャラクターを描写する場合、
PCとXキャラの2人あわせて「1人分」の描写なので、無関係の行動などはお控えください。
※Xキャラだけで1人分の描写とすることも可能です。
その場合は、PCさん自身は描写がなく、Xキャラだけが描写されます。
Xキャラのみの描写をご希望である旨を、アクションにわかるようにご記入ください。
※Xキャラをご希望の場合は、口調などのキャラ設定をアクションに記載してください。
Xキャラ図鑑に書き込まれている内容は、そのURLだけ書いていただければ大丈夫です。
それでは、皆さまのご参加お待ちしております。