霊界ポストからの手紙｜リアクション

霊界ポストからの手紙

●１６時２９分：既成事実
　けたたましいサイレンを伴い、消防車と救急車が慌ただしく通り過ぎていった。
　そうしてドップラー効果の余韻も遠ざかった後、今度は一台のバイクがトンネルに吸い込まれた。
　誰にも見えない筈の、永遠の少女が手紙を受け取ったのは、それらを見送って少ししてからのこと。
　無論そんなことは知る由もなく、アリサは愛車と共に突き進む。
　照明ひとつないトンネルだが、絶えず押し寄せる生温い闇をヘッドライトが貫いてくれる。
　お陰で迷うことなく、うろ覚えだった老朽箇所の地点を認識できた。
　後続車がないのを確かめて、後ろに積んだ大きなズタ袋を解き、自重任せにひっくり返す。
　中身はかき集めてきたコンクリートのがら。
　アリサとて伊達に日頃からバイクであちこち走り回っているわけではなく、今回は古いビルの解体現場を把握していたのが幸いして、すぐに入手することができたのだった。
「これでよし。あとは――」
　一車線にこんもり山ができたところで、時刻を確かめてみると。
「――いっけない！」
　既に１６時３０分を回っていた。
　アリサは大慌てでUターンし、来た道を引き返す。
　まだ最後の仕上げが残っているが、トンネルの中ではやりづらい。

　間に合え……！