モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！｜リアクション

モフれ！第３６回寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテスト！

●アイ活研をよろしく

　さて。セクシー美女が続いたところで、実行委員の海原茂は毛色の違う参加者を求めていた。
　さまざまな趣向の人々に楽しんでほしいと寝子ヶ浜ビーチ☆スターズコンテストには様々な賞が存在する。
　多様性は、豊かさである。豊かさは、面白さにもつながっている。
　元寝子高生徒会長で、かつ、猫鳴館というカオスな寮の自治会長も務めてきた茂は、そのあたりのところは理解している。そんな茂が目を止めたのは、寝子高のスクール水着に制服のジャケットを羽織って、さらに黒猫耳のカチューシャを付け、さらにさらにマイクを手にした、アイドル風の少女であった。

「えっコンテスト出場決定ですか！？」
　茂に声を掛けられ、喜矢武あいおは目を丸くした。
（スクール水着と制服は、コンテスト用ではなく、間違えて持ってきたものだったのですが……）
　猫耳カチューシャもあいおシスターズの配信用に持ち歩いていたもので、ここにきてテーマが『けもの』だと知り、それならば耳をつけて普通に楽しもうかと、その程度の心意気であった。
　が、予定していなかったとはいえ、ステージに立てるのは、アイドル活動研究部の活動としては好都合。
「わかりました。出場しちゃいましょう！」

　ステージという名の大海に躍り出たあいおは、大きく両手を振って会場にアピール。
　アイドルは何より笑顔が大事だ。もっとこの子を見たいな、って思ってもらえるように、リラックスして手前の人にも奥の人にも届くように手を振る。これが、あいおがアイドル活動研究会でアイドルを研究し、自らもアイドル活動に身を投じた結果、会得したアイドルの姿である！
　あいおのアピールはさっそく届いたようで、拍手をしてくれる人、足を止めてくれる人、あいおの笑顔に応えて手を振ってくれる人が現れる。
（掴みはおっけー、ですよ）
　会場中が、という一体感はまだないけれど、ひとりでもふたりでも自分を見てくれる人がいるなら全力でアイドルしちゃうのが、あいおのアイドル道だ！
　ステージ中央まで来るとあいおは右手でマイクを構え、左手はパーにして上にあげてキメポーズ！

「寝子島高校1年、アイドル活動研究部部長の喜矢武あいおでーす！
　今日はアイ活研として会場を盛り上げていきますよー」

　アイ活研の名を聞いたことがない人もこの砂浜には多いだろう。
（そんなキミにこそ、知ってほしいのです！）
　流れてきたのは、キュートでキャッチーな振り付けで、今まさに流行中のアイドルソングだ。
　イントロから最初の一声で、会場のボルテージが一段と高まったのがわかった。
　踵を鳴らして
　指先を泳がせるような、夏らしい振り付けも完璧だ。
　いつしか自然と手拍子が湧きおこり、あいおも押しあげられるようにノってくる。
　間奏中は審査員席に手を振ったり、観客へのアピールも忘れない。
「みんなー！　元気？　もっと、もっと、行けるよねっ！？」
　ステージを縦横無尽に駆けまわって、元気いっぱいなあいおのパフォーマンスは終了した。

「寝子高アイ活研応援してくださいねー！　モフーーー！」

　ぴ、ぴ、ぴぴぴぴ、ピッカピカ！！
　上がってゆくモフ・メーター。
「アイ活研がこんな楽しい部活だったとは。これからも理事長として大いにバックアップする所存だよ！」
　審査員席の理事長、野々ととおのコメントを聞きながら、あいおは大きな満足感に包まれていた。
（真夏のビーチだからかお客さんの熱……盛り上がり方が普段よりもすごかった気がします。
　まだまだ小さな部活なので知名度アップを頑張らなきゃですね！）