南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　二人の姉妹は手を繋いだ状態で園内の縮図とも言える案内板を眺めていた。
　恵御納夏朝の焦げ茶色の瞳は忙しない。目移りする状態で一つに絞ることができなかった。
「いろんな動物を見たいんだけど、どこがいいのかな。アニマルランドが、それっぽいよね」
「僕としてはサファリワールドだね。動物の種類が多そうだ」
　恵御納夏夜が落ち着いた様子で言った。
「ネコ科の動物さん達がたくさん見られるかな」
「行ってみよう」
　夏夜に促され、夏朝は笑顔で頷いた。

　ネコ科に期待した夏朝は一目で興奮の度合いを引き上げる。
「見て、夏夜ちゃん！　今日はホワイトタイガーだよ！」
「そうだね」
　悠々と歩く姿を間近に見られた。夏朝は反応を期待して小さく手を振った。
「今、こっちを見たよ！　前脚を上げて『いらっしゃい』って！」
「毛繕いだと思うけど」
「そんなことないよ！　ほら、舌をペロッと出して違うって言ってるよ！」
　軽く飛び跳ねながらホワイトタイガーを指差す。
「そうかもしれないね。次に行こうか」
「ゆっくり楽しみたいんだけど、時間があるし」
　夏朝はもう一度、小さく手を振って離れた。
「なんか凛々しくて、とても高貴な感じがするね」
　夏朝はサーバルキャットを見て言った。
「実際に見るのは初めてだけど、僕が思っていたよりも耳が長いね。あと身体の模様がチーターみたいだ」
「それ！　夏夜ちゃん、チーターも見ないと！」
　夏朝は夏夜を引っ張るようにして先頭を歩いた。
　一通り見た二人はプレイゾーンと呼ばれるエリアに足を運んだ。
　動物園のイメージが瞬く間に遊園地へと変わる。
「びっくりなんだけど。どう見ても遊園地だよね」
「そうだね。観覧車に乗って上から全体を見てみようか」
「それで次の行き先を決めるんだね」
「そうだよ」
　二人は観覧車のゴンドラに乗り込んだ。他のエリアも見ることができて夏朝は窓に額を引っ付けて、わー、と子供っぽい声を上げた。
「夏朝ちゃん、あそこにメリーゴーランドがあるよ」
「あるけど、乗らないよ？」
「どうして？　楽しそうだよ。ね、一緒に記念に楽しもうよ」
「夏朝は似合うと思うけど、僕には合わないよ」
　クールな一面を見せて口元だけで笑う。
　のんびりとした一周を終えて二人はゴンドラを降りた。
　瞬間、夏朝は夏夜の手を握る。
「え、なに？」
「いいから、いいから」
　夏朝は走りながら陽気に返す。その意図に夏夜は気付いた。メリーゴーランドが目の前に迫る。
「待って、恥ずかしいって。僕は乗らないからね！」
「まあ、まあ」
　夏朝は言いながら乗り口に突っ込んだ。
「ほら、平気だよね」
　夏朝は木馬に跨った状態で後ろに声を掛けた。
「どこが、だよ」
　赤面した夏夜は顔を伏せるようにして耐えた。

　二人はテラス席に座った。冷えた飲み物で乾いた喉を潤す。
「たくさん回ったから冷たい飲み物が美味しいね」
「そうだね。臨海学校、来て良かったよ」
「僕も夏夜ちゃんと一緒に来られて、本当に嬉しかったよ。僕等は今回が最後だけど、来年もその先も寝子高の皆が楽しめる、そんな臨海学校になればいいね」
「きっとなるよ。強い想いは必ず叶う。どうしてなのか。そう思えるんだ」
　夏夜は青い空を眺めて力強く言った。