南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

「えー、悪いよ」
「気にしなくていいよ」
「でも、そのチケット、高かったよね？」
「どうかな。割引されるクーポンとか使ったから」
「本当に？」
「もちろん。だから気にしないで一緒に行こうよ」
「それなら」
　このような遣り取りを経て八神修は七夜あおいと一緒に南紀白浜アドベンチャーワールドに訪れた。
　二人分のチケットを使って入園を果たす。エントランスドームを横手に見ながら二人は同時に足を止めた。
「あおい、どらから行こうか？」
「パンダはどうかな」
「ここから近いし、行ってみよう」
　二人は案内板に従って希少動物繁殖センターに入っていく。パンダを目的とした人々が詰め掛けて結構な賑わいとなっていた。それでも行列の待ち時間はなく、開放的なスペースでパンダを間近に見ることができた。
　朝食の最中のようで竹を噛む音がしっかりと聞こえる。
「こんなに近いなんて思わなかったよ」
「手を伸ばしたら届きそうだ」
　修は手にしたスマートフォンで愛らしいパンダを撮った。
　見かけたショップにも立ち寄る。
「コロコロしたパンダが可愛い」
　あおいは縫いぐるみに顔を寄せた。修も一緒に眺めた。
「でも、今はいろんなところを見て回るほうがいいよね」
「あおいがそれでいいなら」
　二人は寄り添うようにして園内を見て回った。
　休憩を兼ねて修はあおいをサファリワールドのバックヤードツアーに誘った。
「でも、これって事前予約が必要で、別料金がいるみたいなんだけど」
「あおいが気にするような料金ではないから。ほら、早く乗り込まないと。後ろが詰まっているし」
　事実もあってあおいはバスに乗り込んだ。二階に当たるところに二人は座った。大型の動物が伸び伸びと過ごす様子を目の当たりにして興奮気味の時間を過ごした。
「それでは今からライオンに肉を与えます」
　専用のスタッフが生の肉を与える。ライオンは太い前脚で肉を押さえ込み、大口を開けて肉に噛み付いた。口の周りを血で赤く染める。豪快な食べ方でツアー客を魅了した。
　バスを降りたあとも二人の興奮は続く。
「あおい、行こう！」
「いっぱい見て回ろうね！」
　修の差し出した手をあおいは握った。二人は弾けるような笑顔で駆け出した。