南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　三人組の女子が千畳敷に訪れた。
　一人が駆け出して指差す。
「ほら、見てよ。ミルフィーユみたい！」
「えー、そうかなぁ。黒っぽいあそこなんかはガナッシュだよね。絢はどう思う？」
　二人は青山絢に目を向ける。
「私にはスイーツに例える方が不思議に思えるわ」
「じゃあ、何に見える？」
「私も聞きたい」
　二人は絢に詰め寄る。
「私は、バームクーヘン？」
「スイーツじゃん！」
「スイーツだよ！」
　二人に指摘された絢は苦笑いを浮かべた。
「記念に写真を撮ってよ」
「私も」
「わかったわ」
　絢は愛用のデジタルカメラを取り出す。二人の友人に立ち位置を示してシャッターを切った。
「もう一枚、お願い！」
　二人は視線を交わし、大きな口を開けて食べる真似をした。絢は口に微かな笑みを浮かべる。
「はい、バームクーヘン」
　独自の合図で画像に収めた。
　三人は代わる代わる写真を撮って次の場所に移動した。
　同じ自然であっても荒々しさが桁違いだった。強い風と真下に見える荒波に後退りしそうになる。
　三段壁でも写真を撮った。
「ここって恋人の聖地なんだね」
「ハートのモニュメントにハートの南京錠って、意外に凝ってるよね」
「こういう場所、寝子島にもあったわ」
　絢は記憶の中の光景を思い出す。
「恋人の聖地って言われても、相手がいないと意味ないよね」
「同性愛に目覚めるとか」
「ないない、あるわけないじゃん。あ、でも絢が相手なら少しは」
　鉤爪の形にした両手でゆっくりと迫る。
「ま、待ってよ。そんな気はないから」
「本気にするなよ」
　もう一人が絢の肩を叩いて笑った。
　ここでも三人は大いにはしゃいで写真を撮り合った。