南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　楡宮遠海は大雑把に千畳敷を見て回った。
　興味は一方に大きく傾いている。急ぎ足で道を戻り、千畳口のバス停から移動を開始した。
　車中では一人用の座席を選んだ。窓から見える牧歌的な風景は徐々に失われて街らしく変わってゆく。暖色系の店舗を見掛ける度に遠海は生唾を呑んだ。
　車中で揺られること、数十分。目的の場所に到着した。
「ここね」
　和歌山ラーメンを大々的に掲げる店舗に遠海は興奮した様子で入っていった。
　店内をざっと眺める。テーブル席とカウンター席に分かれていた。遠海はカウンター席の右端に座った。
　目の前に置かれたメニューを手にする。少し迷うような表情はすぐに笑顔に変わった。端から順に食べることにした。

　客の目がそれとなく遠海に向けられる。本人は意識した様子がなく、割り箸で麺を摘まみ、丁寧に息を吹き掛けながら静かに食べ進めた。その姿は可憐であった。故に傍目には異様に映る。側に重ねられたラーメン鉢は四つを数えた。
　五つ目に取り掛かって十数分。全ての麺を食べ切った。残ったスープはレンゲを使って飲み干した。
　店主と客が見守る中、遠海は手を合わせて、ごちそうさまでした、と艶やかな唇で口にした。
　速やかに食事代を支払うと店を出た。
「次は海鮮で、パスタの名店と、あとは……」
　指を折って数えながらバス停に向かった。