南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　電車とバスを利用して朝鳥さゆるは千畳敷に足を踏み入れた。
　平たい岩石が幾重にも重なったような奇観が目の前に広がる。風は強く、荒々しい波が岩に押し寄せる度に真っ白に砕かれた。
　最果ての地を眺めるような目付きでさゆるは歩を進める。塩気を多く含んだ風がショートの髪を乱暴に掻き乱す。関係ないとばかりに岩を踏み締めて進んだ。
　周囲から人影が消えた。かなり奥まで歩いてきた。
　さゆるは岩の突端に腰を下ろす。潮風と海の音が間近に感じられた。物憂げな顔で耳を傾ける。
　そっと瞼を閉じた。身体が前後に揺れ動くことはなかった。愚直な程に同じ姿勢を保ち、時を過ごす。
　――どうして？
　胸の中で疑問が生じる。答えるようにぼんやりとした人物の容姿が鮮明になっていく。
　ツインテールで童顔。キャバクラ『プロムナード』では陽気を身に纏う。店を離れると内側に押し込めた闇が噴き出し、人を遠ざけた。
　さゆるが身を寄せている女性、名を姫木じゅんという。
　――じゅんは大きな存在に……。
　閉じていた瞼が震えた。想いが溢れて一筋の涙となって流れ落ちた。