南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　一年の男子、最後の一人が砂浜に戻ってきた。項垂れた姿でふらふらと歩く。見事に泳ぎ切ったことで周囲から賞賛の拍手が送られた。
　照れ笑いを浮かべた男子は仲間と合流を果たし、速やかに観戦する側へと回った。
　続いて二年の女子が波打ち際に集められた。二度目の臨海学校で慣れているのか。緊張感に欠ける私語が多く聞かれた。
　楡宮遠海は口を引き結び、上体を前に倒してスタートの時を待った。その姿勢はなだらかな胸を巧みに隠す。その努力を無にする女子が左右にいた。どちらも胸は大きく、メロンとスイカを想起させる。
　そのような二人に挟まれた遠海は心に負の感情を溜め込む。破裂寸前まで追い込まれた。その時、勢いよく笛が鳴らされた。
　遠海は爆発に等しい飛び出しを見せた。水飛沫を上げて海に駆け込み、誰よりも早くに飛び込んだ。
　浮き上がると全身が白い波に包まれた。手と足の凄まじい威力で突き進み、誰も寄せ付けない。折り返しのブイを回り、白波に包まれた状態で戻ってきた。
「私が最強よ！」
　紅潮した顔で拳を突き上げた。ライブハウスのような熱狂が遠海を讃える。
　その中、堂々と胸を張って歩いた。
「砂浜が賑やかね」
　折り返しのブイを平泳ぎで通過した水上桜は小首を傾げた。ゆったりとした泳ぎ方に無理はなく、生まれた余裕で周囲に注意を傾ける。
　少し前をいく楠瑠璃に目がいった。クロールの手が一定ではなく、バタ足も弱々しい。溺れているようには見えないがスタミナ切れを思わせた。
　桜は静かに近付いた。
「もう少し泳ぐペースを落とした方がいいわ」
　瑠璃の息継ぎの瞬間に大きな声を出す。内容を聞き取れたようで、すぐさま立ち泳ぎとなった。
「水泳部の人よね？」
「そうよ。スタミナを考えて、ゆっくり慌てずに泳いだ方がいいよ」
「急いだつもりはないんだけど、泳ぎ慣れていないからかな」
「一緒に泳ぐ？」
　桜の提案に瑠璃は笑顔で乗った。
　二人は横に並んだ状態で泳いだ。最後はクロールで共に笑顔のゴールを果たした。