南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　最後を飾るのは三年の男子であった。早々と雨崎荒太郎が出番を迎えた。
「ビーチ・フラッグスでも全力だよー」
　間延びした声には迫力がなく生徒達の笑いを誘う。
　ただしそれなりの成果を出した。水泳部部長の肩書は伊達ではない。陽気に勝ち上がり、残り三人に残った。
　水泳部の部員達が一丸となって荒太郎を応援した。
「頑張るよー。見ていてねー」
　スタート直前であっても緊張感は皆無。明るい顔で腹這いになった。
　笛の音と共に全員が起き上がる。
「部長、頑張って！」
「頑張るよー」
　走りながら手を振ったことが災いした。滑り込むタイミングが遅れて惜しくも敗退となった。
「あれー」
　笑いながらの退場に場は和んだ。
　観戦していたラッセルは納得の表情でいた。
「雨崎らしいよな」
　競技は続き、一人の勝者が決まった。
　その次の競技にラッセルが出場した。初めてのこともあり、際どい初戦となった。スタートは悪くなかったが砂に足を取られ、転ぶようにしてフラッグを手中に収めたのだった。
「あっぶねー」
　運動部に所属している男子が大半を占めていたので薄氷の勝利は続く。
　残り五人となった。ラッセルは走り出す前から息が切れていた。連戦で疲労は蓄積した。腹這いの状態で息を呑んで堪えた。
　笛の音を聞いても動きが鈍い。フラッグを目指して走るものの身体が傾く。膝に力が入らないこともあってフラッグを前にして転んだ。手を伸ばしたが届かない。横から別の手が伸びて敗退が決まった。
「これはキツイ。どこかで、休まないと」
　ふらふらの状態で砂浜を歩く。項垂れた姿で座っているクラスメイトを見つけた。ラッセルは隣に腰を下ろした。
「どうだー？　そっちは、まだやれそうか？」
「……ギリギリかな。遠泳まで休まないと、ヤバそうだ」
「まあ、やるしかねーよな」
　拳と拳を合わせた二人は午後の遠泳に備えた。