南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！｜リアクション

南紀白浜を臨海学校で味わい尽くす！

　やがて二年の女子の出番を迎える。
　楠瑠璃は着ていたジャージを脱いだ。周囲の男子達の目が集まり、低いどよめきが起こった。
　ピンクのビキニは目立つ。童顔でいて豊満な胸とくれば性別に関わらず、多くの人の目を集めた。
　その反響が大きく、いつまでも続くことで瑠璃は気づいた。
「もしかして」
　スターターの幸太のところに急ぎ足で向かう。
「あの、先生。三日目は水着、自由ですよね？」
「いや、学校指定のスクール水着だが、それはビキニか」
「はい、やっぱりホテルに戻って着替えた方が、いいですか」
　もじもじしながら上目遣いになる。幸太は腕時計を見た。
「時間がない。そのまま競技に出て貰うが、それでいいか？」
「わかりました。頑張ります」
　瑠璃はスタートラインに整列した女子の中に加わる。合図と共に全員が後ろ向きの腹這い姿になった。
　幸太は首から下げていたホイッスルを咥えた。全員の静止を見て笛を鳴らす。
　一斉に立ち上がる。歓声が一際、大きくなった。
　瑠璃の胸が大きく揺れる。走り出すと激しい上下動を見せた。その異様な熱を一身に受けてフラッグを目指す。
　しっかりと目を固定して頭から滑り込んだ。
「取れたよ！」
　瑠璃は笑顔で立ち上がり、フラッグを掲げた。躍動する胸に男子達は狂喜した。
　遠目で見ていた楡宮遠海は自身の胸と比べ、落胆の息を吐いた。
　凄まじい盛り上がりは三回戦までとなった。走りながら迷った瑠璃は加速が遅れ、バレー部の女子に横からフラッグを掻っ攫われたのだった。
　一方で最終戦が始まろうとしていた。
　水上桜は手首や足首を回し、ちらりと隣を見やる。相手はほっそりとした長身だった。その場で軽く跳んだ。一メートルを超える跳躍に周囲はざわつく。
「あの人、走り高跳びで県大会優勝したことがあるらしいよ」
「マジで。じゃあ、勝ち目ないじゃん」
　二人組の女子の声が聞こえる。桜の闘志に火が点いた。
　二人は揃って俯せの姿勢を取った。
　笛の音と共に立ち上がる。小回りの利く桜が先行した。水泳部で鍛えた脚力を活かし、フラッグに手を伸ばす。
「え」
　斜め後ろにいた相手が跳んだ。宙で桜を追い抜き、長い手はフラッグを掴み取る。
　二人組の女子の予想通りの展開になった。桜は身体に付いた砂を手で払い落とす。悔しさが滲む表情を振り払って歩き出した。