霊界おうち探訪！｜リアクション

霊界おうち探訪！

〇寝子島のあやかし

　人気アニメ『魔法少女ミスティックアリア』の1/6スケールフィギュアである姫之崎ありあは、旧市街にある築推定五十年？のアパートの一室に住む女子の部屋に住んでいる。
　ある夏の週末、部屋の住人は何かのイベントに行っているらしく、２日ほど家を空けていた。

　そんなわけでのんびりしていたら──来訪者があった。
「『季刊　妖（あやかし）生活』の記者さん？」
　赤いルージュでばっちりメイクを決めた女性が、人間ではないのはすぐに感じた。
　おそらくありあと同じ付喪神であろう。
「いわゆる『お宅訪問』の取材？　あたしの場合はこうして寝子島に住んでいて、霊界に家とかないんだけどね。それでもいいの？」
　ありあの疑問に、記者はにこやかに頷いた。
「はい。最近霊界とつながってから寝子島は、別荘地として人気なんです」
「そうなんだ。それじゃ、家の中を案内するね」
　
「これは……壮観ですね」
　住人はアニメの声優を目指しているだけあって、アニメグッズがずらりと並んでいる。
　特に「魔法少女ミスティックアリア」のグッズが山のようにあるのを、記者は感心しながらカメラに収めた。
「こちらのお宅はとても落ち着きますね。歴史がある感じで……」
　天井や壁を見回しながら記者が言う。
「このアパート、築五十年って触れ込みらしいけど……おばけが出てきて、その子と話をしたりすることが……って、もう出てきた」
　ふわりと、天井から地縛霊が顔を覗かせた。
　住人の子は霊感がないのか、まったく気がつかないのは幸いなことだ。
『取材記者さんなの？　うわあ、写真はちょっと待って髪梳くから』
「いや映る気満々じゃない霊子ちゃん。そもそも、霊って写真に写るの？」
「特製のフィルム使ってピント合わせれば写りますよ。それじゃ、一枚撮らせてください」
　そんなこんなでちゃっかり映り込んだ地縛霊の子が言うには。
『元々ここは大根畑だったのよ。戦後に寝子島の開発が進んだ際にアパートが建ったけど』
「へえ。ときおり大根料理とか食べたくなるのはそのせいなのかしらね」
　もっともありあは大根料理を食べたことなどないから、どんなものかわからないのだが。

　頷きながら興味深そうに聞いていた記者は、
「ありがとうございました。本ができたらお送りしますね」
　と頭を下げて帰っていった。
「いいけど……本ここに送られたら、あの子びっくりするんじゃないかしら」
　見つかる前になんとか隠そうか、と思うありあだった。

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